4 避難
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だから、のんきな独り言の内容とは裏腹に慎重に近づいたのだった。
すぐそこだ。
もうあと10歩もないところまで久美子が近づいてきた。
「アオイさん、まだですか?」
声こそ出さないが桃子は心配になってアオイを見つめた。
それは表情で明確に伝わっていた。アオイは決断を迫られた。
「もう少し時間が必要だけど、この際、仕方がないわ!」
アオイは心を決めて、ポドリアルスペースを作るために立ち上がろうとした。
しかし、その前に美紅が動いた。
久美子からは死角になる柱の裏から、一気に走り出したのだ。
「えっ!?」
久美子は驚いた。
最初に認識した物音に身構えた。
コンクリートに足音が反響して、一瞬戸惑ったのだ。
危険を感じ身構えたために、一瞬気後れした久美子は、美紅の姿を認識できたのは一瞬だった。全力で久美子の死角となる別の柱に移動する後姿を一瞬確認できただけだった。
「は、裸ぁ?」
一瞬自分の目を疑った。
久美子の目に映ったのは自分と同じくくらいの身長の人の裸の後姿だった。一瞬のことで確信は持てなかったが、女の子だと思った。
だいたい裸の女の子がこんなマンションの駐車場にいるなんて想像していなかった。あっけにとられて、せっかくの一眼レフを使って特ダネを撮ることを忘れていた。
柱の陰に隠れた美紅は息を切らしていた。
「はあ、はあ、はあ……思わず飛び出しちゃったけど、どうしよう……」
みんなのピンチになんとかしなきゃと思うと体が勝手に反応してしまった。
だが、ノーアイデアだった。
追いかけっこだけなら逃げ切ることはできるかもしれない。しかし、久美子はカメラを持っているのだ。この恰好を写真に撮られることは絶対に避けたかった。
今回の飛び出しは久美子の不意を突いたことで撮影されることはなかった。しかし、逃げ回っていれば久美子も落ち着くだろうし、写真に撮られてしまう可能性もグっと高くなってしまう。
写真に撮られるのが早いか、アオイのパワーが回復するのが早いか。
美紅は柱の陰から久美子の様子を伺った。
久美子はカメラに手をかけていた。今度は撮影する気満々だ。正体を突き止めようとしているのだから、当然の行為だった。
そして、一歩一歩、美紅の身を隠している柱の方に向かってきていた。
「カメラ構えられてたら、逃げれないよぉ……」
美紅は柱から柱へ逃げていくという手を考えていたのだが、その動きを完全に封じられてしまったようだ。
なすすべもなく美紅はただ、久美子が迫ってくるのを待つしかなかった。
久美子はさっき見た人影を写真に撮りたくてうずうずしていた。
写真歴はもう5年にもなる。捕まえるのは難しくても写真にだったら残せる自信はあった。
もちろん、こんな駐車場で裸のような恰好をしている相手だ。
正気とは思えな
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