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パンデミック Another Episode 〜SCOPIO〜
"サソリ"の記憶 「1」
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!!」


誰かの呼びかけと、激しい揺さぶりで正気を取り戻した。
気付くと俺は、防壁の端っこで座っていた。すっかり腰が抜けたような姿勢だったが、それを情けないと思う
余裕は、その時はなかった。


「しっかりしろ! おい!」



何度目かの呼びかけでようやく正気を取り戻すことが出来た。
気が付けば、目の前に一人の兵士がいた。

不思議な兵士だった。
どの国籍の人種でも見たことがない綺麗な白髪。
過去の戦闘によるものか、右目と左頬には傷跡がある。
歳は俺と同じくらいだったが、俺よりも遥かにベテランの風格があった。

目の前の兵士は俺の肩を掴み、少し安堵したような表情を浮かべた。
どうやら俺が正気を取り戻すまで肩を揺さぶっていたらしい。

「……ようやく意識が戻ったか。特に目立った外傷も無いな」

「え………? あ…あんたは?」



「………ブランクだ。お前は?」

「…………フィリップ」



放心状態で防壁の端で腰を抜かしていた新兵。
そんな情けない新兵を救った白髪の英雄。


それが俺たちの初めての対面だった。



「フィリップか。他の……お前の部隊の仲間は? なぜ一人で防壁の端にいたんだ?」

ブランクのこの質問を聞いた途端に、自分がなぜこの状況になっているのかを思い出した。



目の前で起こった無残な殺戮。

一人は感染者に喉を食い千切られて死んだ。

一人は不意を突かれて後頭部を頭蓋骨ごと齧り取られた。

一人は武器を持った腕を噛まれ、挙句その腕を千切られ泡を吹いて死んだ。



「………うぷっ……!! ぐえぇ、ゲフッ、グフッ……おえぇええぇ………」


その時の光景が鮮明に脳裏によみがえった。
途端に強烈な吐き気に襲われ、口を押さえた指の隙間から胃液が漏れ出る。


恐怖。後悔。苦痛。嫌悪。


頭の中がごちゃごちゃになって、それを必死に整理しようとしても吐き気に邪魔される。



「…………辛い体験をしたみたいだな。だが、ここで立ち止まっているとお前も死ぬぞ」


そう言い終えると、ブランクと名乗った兵士は俺の襟首を掴み上げ、俺を無理矢理立たせる。

「さっさと立て。感染者の胃袋に収まりたくはないだろ? ……生き残りたいなら武器をしっかり握って戦え」

「………了解……あぁ、畜生………」


コンバットナイフを握り直し、ふらつく脚に力を込める。


やってやる。
この地獄を切り抜けて、同胞の仇を取る。

自分の頬を思い切りぶん殴り、気合を入れ直した。









…………そこからのことは、正直、あまり覚えていない。

ブランクの提案で
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