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〜銃声と硝煙の輪舞〜
災禍の鎧MkU
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吐き出される蒸気によるものだと思った。

しかし違う。

巨人の隙間から、全身から漏れ出ているのは過剰光であり、現実的な熱感処理はなされないはずだ。当然、それに付随する陽炎のような空間エフェクトもないはずである。

ならばあれは……、と少年がそこまで考えた時、巨人は両腕を上げ、その砲身をこちらに向けた。白い表面に反し、砲口の内部はねっとりとした濃密な闇が巣くっている。

レンが、そのわだかまる闇の中に仄暗く輝く赤黒い光を視認したと同時――――

ギェアアアアアア!!!という悲鳴じみた大音響とともに、濁った血色の大槍が発射された。

二条のエネルギー流は、突っ立っている少年を容易く覆い尽くす。

寸前。

天より下った光の柱に空中で突き刺さり、照準がずれてステージ西方、草原地帯の方向へとその矛先を変えた。

夜闇の彼方へと消えていく二条の光。

しかしそれは直後、地面を揺るがす大爆発を引き起こした。

ポウッ、と遠方で輝いた燐光は瞬く間に膨れ上がり、その矛先を逸らした光の柱など比べ物にならない半球を作り上げる。

暗赤色のそれは、推定だが直径百五十メートルはその猛威の中に呑み込み、そして消えた。

遅れること数秒、ゴウッ!という音とともに全身の皮膚が逆立つような衝撃が届く。灌木が薙ぎ倒され、足元の岩盤からは悲鳴のようなヒビ割れの音が響いた。

「――――ッ!!」

―――ボサットシテンジャネェゾ、クソガキ!

ギィン!と脳裏にガラの悪い口調の声が響く。その声の主は、たった今守ってくれた狂怒だ。

彼は苛立ちと、珍しい焦燥にかられた声色で言う。

―――失敗シタ時用に溜メトイタ《天墜》ハモウ使エネェ。集メラレル日光ガコウモ少ネェトナ。再装填ニ掛カル時間ハ想像モデキネェゾ。

「だろうね。……狂楽、アレに《傀儡》は使えそう?」

独り言のように放たれた言葉。

これに応じたのは、まだ幼い少年の声。だがそこには、聞く者全員を不快にさせるような安っぽい悪意が常に混じっていた。

―――ハァ?冗談言ワナイデ欲シイナ。ソモソモアンナノ、許容範囲外ダッテノ。操ルベキ精神ガアルカドウカモアヤフヤナノニ。

「……だろうね」

はぁ、と溜め息を吐きつつ、レンは改めて巨大な《敵》の体躯を仰ぎ見る。

精神。

狂楽に言わせれば、存在すらも疑わしいそれを、しかし確かにこの巨人は持っているような気がする。少なくとも、頭部の眼球から放たれる視線だけは本物だ。無感情や無機物的では決してない。

ならば、この意思は誰のものなのだろう。

新生《災禍の鎧》――――マークUを構成する要因。センチメントの爆発を引き起こしたフェイバルのもの、というのが一番簡単だ。

だがレンは不思議
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