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〜銃声と硝煙の輪舞〜
災禍の鎧MkU
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それは。

実際、《災禍の鎧》に支配されていた身から出たからこその言葉だったろう。

常人にとってはただの咆哮にしか聞こえないその音の連なりの中に、奇怪な絶叫の中に、少年ははっきりと《笑い声》を聴いた。

次いで、雷撃に打たれたように、唐突に悟る。

「まさか――――」

まさか。

まさか。

まさか。

()()()()()……()()()、のか?」

それが、答え。

フェイバルは――――かつて初代にフランと呼ばれた少女は、狂った。

待ち遠しくて待ち望んでいた初代に会えて、再会を果たして、心の均衡を崩した。

これまで彼女の精神を支えていた盲目的なまでの目的そのものが、その根源が現れて、消え去った。

跡形もなく。

もちろんそれは、彼女が望んだことだったのだろうけれど、それでも不幸のドン底に浸かっていたような彼女は、押し潰されてしまった。

不幸ではなく。

絶望ではなく。

皮肉なことに、どれだけの逆境にも耐えてきた《背中刺す刃》フェイバルは、他ならない自身の希望で――――沈んだ。

「そん、な……そんな、ことって……」

ギヂリ、と噛みしめられた歯ぎしりの音が鳴る。

無駄とは判っていても、無謀だと思っていても、無為だと悟っていても、それでも叫ばずには――――怒鳴らずにはいられなかった。

「なんッでだよッ!待ってたんでしょ!?会いたかったんでしょ!?なら……なら何で素直に喜ばないんだ!!」

いや。

違う。

彼女は、もう《彼女》とは間違っても呼べないモノは、素直に喜んだのだ。

跳び上がって喜んで――――跳び上がりすぎて堕ちた。

手放しで喜んで――――正気を手放した。

叫ぶ少年の眼前で、山々の合間から立ち上がり、笑い終わった莫大な《白》がゆっくりと巨大な身体を前傾させる。有機的な流線型の上体の上で輝く単眼から放たれる紅の眼光が、こちらを射抜いたのをレンははっきりと感じた。

唸り声が、変わる。

『ォ……ディルルルrrrrrrrrrrrrr』

装甲の各所にあるエラ状のスリットから輝く蒸気を排出しつつ、巨人は低い唸り声を発した。

あたかも、少年の願いが、祈りが、乞いが受け届けられたように。

しかし、レンはその思いがまったくの間違いだと気付くのに数瞬もいらなかった。

ゾゥン!!と。

空気そのものの粘度が増したような圧迫感(プレッシャー)が、小柄な身体に襲い掛かった。

「ぐ……ぁッ!!」

次いで。

巨人の両腕に突き出した《砲口》の周囲を取り巻く背景が、陽炎のように揺らいだ。

一瞬、レンはそれがスリットから
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