第168話 襄陽城攻め1
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うだった。甘寧も彼女の強い意志を感じ取ったのか強く頷いた。
「思春、車騎将軍に言づてを頼まれてくれるかい?」
「言づてですか?」
「ああ。他の者じゃまずい。今回の討伐軍の規模はでかい。どこに蔡徳珪の間者が紛れているかわからない。だから私が夜襲を仕掛けることは限られた者だけで共有していたほうがいい。お前は非公式に車騎将軍に近づいてこの件を伝えておいて欲しい」
「かしこまりました」
甘寧は孫堅に拱手して頭を下げると周囲の気配を気にしながら陣所を後にした。その後ろ姿を見送り孫堅は深呼吸をした。
「さあて。ここが踏ん張りどころだ。ここで門をこじ開けることが出来れば車騎将軍への借りをちゃらにできる」
孫堅は自らの両頬を両手で挟むように叩き気合いを入れた。その表情は武人然としていた。
「ここまで駆け上がって全てを失う気なんて毛頭ない! 車騎将軍、この孫文台の意地を見てな!」
孫堅は誰も居ない陣所で声を上げる、その場を後にした。
「雪蓮!」
孫堅は雪蓮の陣所にずかずかと入っていった。雪蓮は簡易の寝所に寝そべり、塩を肴に酒をちびちびと飲んでいた。
「何っ!? 母様、こんな夜遅くに何よ」
孫策は孫堅の訪問に驚いている様子だった。だが、寝所から起き上がる素振りはなく、飲みかけの酒に口をつけた。
「雪蓮、私の夜遊び付き合ってくれないかい?」
孫堅は孫策の側に歩み寄ると軽快な様子で孫策に言った。孫策は彼女を面倒そうな表情で見上げた。孫策は自分の母が何か面倒なことを自分に押しつけようと考えているのではと感じているようだった。
「私は明日の朝が早いから遠慮するわ」
孫策は一言答えるとまた酒をちびちびと伸び始めた。孫堅は孫策の言葉など無視して、孫策の酒瓶を奪い取り一気に飲み干した。
「何するのよ!」
孫策は孫堅に抗議の目を向けた。孫堅は快活な笑みを浮かべ白い歯を見せた。
「景気づけの一杯さ。雪蓮、襄陽城に夜襲をしかけるよ!」
「今から!?」
孫策は孫堅のことを驚いた表情で見ていた。
「今じゃ無くて何時やるのさ」
「夜襲なんて同士討ちしたらどうなるのよ」
孫策は半目で孫堅のことを見た。
「どうせ蔡徳珪は城に籠もったままだよ。文句を言わずさっさと立ちな!」
孫堅はそう言うと孫策の首根っこを掴み無理矢理に立たせた。孫策は孫堅に抗議の視線を向けるも、孫堅に睨まれ溜息をつき諦めたように自分の力で立ち上がった。
「母様、私はどうすればいいの?」
「西門を兵五千で攻めておくれ」
「母様は?」
孫策は孫堅のことを凝視した。
「私は東門を攻める」
「分かった。母様、派手に暴れればいいのね」
孫堅は孫策に
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