第168話 襄陽城攻め1
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
寧は逡巡するも思い切って孫堅に言った。
「無理? どういうことだい」
孫堅は苛立つ様子もなく甘寧に先を続けるように促した。
「正面の城門は大量の土嚢を積み上げ完全に塞いでいます。破城槌如きでは城門を破るのは困難かと思います」
「全ての門かい? 襄陽城には三方に城門があるはず。一つくらい塞いでいない門は無いのかい」
「西と東の門が未だ完全に塞がっていません。全行程の西門が五割ほど、東門は三割でしょうか。西門を破るのもかなり困難だと思います」
「蔡徳珪は完全に籠もるつもりかい」
孫堅は蔡瑁を馬鹿にしたような表情をしていた。救援が期待できない蔡瑁に残された道は隙を見て落ち延びるくらいしかない。それでも生き残る可能性は低いだろうが、城に籠もるよりましだ。
「そのようです」
甘寧は短く孫堅に答えた。孫堅は溜息をついた。敵を挑発して城門を開けさせる手は使えないことを理解できたからだろう。野戦に持ち込めれば、孫堅にとって蔡瑁軍など子供の手を捻るようなものだ。
初日の手痛い被害を受けただけに孫堅は淡い期待を抱いていたのだろう。その希望は脆くも崩れ落ちた。だが、孫堅の目は野獣の様に獲物を狙う目になっていった。
「狙うは東門だな。今夜夜襲を仕掛ける。時間が立てば立つほど私達には不利になる。雪蓮には兵五千で西門を攻めさせる。私は兵五百を率い東門を攻める」
孫堅は一際鋭い目をすると虚空を睨む。彼女は先ほどまで荒れていたのが嘘のように猛禽の如き目で口角を上げ思春に視線を向け答えた。彼女はすっかり酒の酔いが覚めたようだ。やる気が漲っており、今すぐにでも陣所を飛び出す勢いだった。
「東門の封鎖が完全とはいえないとはいえ、既に三割ほどは土嚢で埋めています。そして、蔡徳珪軍は人足に命じ昼夜を問わず作業に従事させています」
甘寧は孫堅を諫めようと意見した。孫堅は冷徹な笑みを浮かべた。
「時間が立てば門は埋まるということだ。そうなれば私では手を出せなくなる。機会をみすみす逃すのは馬鹿のすることだ。私は食い破れると思えば迷わず前に進む。別にまるっきり勝算がないわけじゃない。雪蓮に残りの大半の兵を任せて西門に城内の兵の目が集中すれば、東門の警備は緩くなる。その後は時間の勝負となる」
孫堅は甘寧に自らの作戦のあらましを説明した。
「思春、雪蓮には私から伝えておく。お前にも期待させてもらうよ」
孫堅は真剣な眼差しで思春に告げた。彼女がこの機会に勝負を賭けていることが窺えた。彼女は正宗に対し落ち度がある。その落ち度を絶対に挽回しなければならない。もし、それが出来なければ蔡瑁討伐後に正宗は孫堅に対して報復的な処罰を下してくるからだろう。彼女も自覚があるため、ここが名誉を挽回する絶好の機会と考えているよ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ