第168話 襄陽城攻め1
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て頭を下げると騎乗したまま離脱した。
「愚直な奴だな」
正宗は甘寧の後ろ姿を追いながら呟いた。
「はい。甘寧の過去はあまり知りませんが孫家のためによく仕えてくれています」
孫権は正宗の呟きが聞こえていたのか無垢な笑顔で正宗に返事した。正宗に甘寧を褒められたことが余程嬉しかった様子だ。
「孫仲謀、忠臣は千金にも勝る。甘興覇を大切にしてやれ」
「ありがとうございます。思春には私から清河王がお褒めになっていたと伝えておきます」
孫権は本当に嬉しそうに正宗に返事をした。
襄陽城攻めは甘寧が加わっても戦局は好転することはなかった。襄陽城に詰める兵士達は危険を冒さず、攻めてくれば対応するのみで積極的な行動に出ることは決してなかった。城内の矢弾には限りがあるため、節約するために行っているのだろう。だが、それは蔡瑁による命令がしっかりと行き届いていることに他ならない。籠城側の志気は十分にあるということだ。
この日、孫堅軍は奮戦空しく襄陽城の城門を破ることは適わなかった。孫堅軍は序盤で被害を出したが、その後は慎重な用兵によって被害を抑えていた。それでも投入した兵士と工兵を合わせた五千の人員の約三割が重軽傷を負い、百人が死亡した。孫堅軍をあざ笑うかのように襄陽城の城門は固く閉ざされたままだった。
めぼしい手柄を上げることができなかった孫堅は苛立っていた。彼女は自らの陣所で酒を瓶ごしにかっくらうと乱暴に口を拭った。自棄酒に耽る彼女の陣所には護衛の兵すらいなかった。外は深い闇が広がり、朧月が天上に顔をもたげていた。時は日を跨ごうとしている。
「蔡徳珪、ぶっ殺してやる!」
孫堅は殺気を放ち誰もいない陣所の陣幕を睨んでいた。彼女はもう一度酒をあおった。
「文台様、起きておられますか?」
陣幕の向こうから孫堅に声をかける人物がいた。孫堅は鋭い視線を向けた。
「誰だ?」
「思春です」
「入りな」
孫堅は短く甘寧に返事した。
「失礼します」
甘寧は孫堅に断りを入れると陣幕を上げ中に入ってきた。孫堅に近づくと片膝を着き顔を伏せた。
「襄陽城に偵察に参ってまいりました」
甘寧は孫堅に襄陽城に侵入してきたことを告げた。甘寧は夜陰を利用して襄陽城に潜り込んでいたようだ。孫堅の目が鋭くなった。
「襄陽城の中の様子はどうだった?」
孫堅は単刀直入に甘寧に訊ねた。襄陽城の城内の様子は彼女が一番知りたい情報だろう。
「文台様、蔡徳珪軍の志気は十分です。元々蔡一族に縁のある者達が籠城に加わっているので当然とも言えます」
甘寧は襄陽城の簡単な説明を終えると一旦語るのを止めた。
「文台様、城門は破るのは無理だと思います」
甘
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