第168話 襄陽城攻め1
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と蔡瑁軍の兵士達が二度目の油を孫堅軍に浴びせてきた。梯子に残った孫策軍の兵士達は悲鳴を上げ踊りながら無残に地面に落ちていった。その様子を孫策は苛々した様子で睨み付けていた。
「雪蓮、撤退だ!」
城壁に再度城壁に昇ろうとする孫策に孫堅が声をかけ制止した。
「母様、何を言っているの!? ここで引ける訳ないでしょ。良いようにやられて黙ってられるわけないじゃない!」
「ひとまず引くんだ。私の命令が聞けないのかい」
孫堅は孫策を厳しい表情で有無を言わない目で睨み付けた。孫策は不満そうだったが軽く頷いた。
「門が破城槌を何度もぶつけてもびくともしなかった。土嚢でも積んで塞いでいるんだろう」
孫堅は忌々しそうに城門を見ながら飛んでくる矢を剣で薙ぎ払った。
「雪蓮、仕切り直しだ。怪我人を連れて一旦下がる」
孫策は不満そうだったが撤退の準備に移るべく周囲を見回し、指揮下の兵士達の配置を確認した。
「お前達一旦下がるわよ! 怪我人を運びなさい。殿は私がやるわ」
孫策は部下達に命じた。孫堅軍が撤退をはじめると襄陽城に籠もる蔡瑁軍の兵士は逃げる孫堅軍に対して矢を放って来なかった。
孫堅軍の被害を遠目で見ていた荊州の豪族達は先陣の役目を負わずにすんだことを天に感謝しているようだった。重傷を負った孫堅軍の兵士達はひとまず後方に運ばれて行った。
その後も孫堅と孫策は幾度となく間髪を開けずに城壁を越えるために兵士達を差し向けた。しかし、それが功を奏することはなかった。初撃と違い孫堅軍も慎重な動きになるも死傷者の数はじわじわと増えていった。蔡瑁軍は油だけなく、腐った糞尿も城壁から落としてきた。そのせいで徐々に彼らの心と戦意を削いでいく結果となり、その弱気が更なる被害を招く結果となっていた。
正宗は正宗軍の精鋭で固めた中軍から、遠目で孫堅軍の戦振りを観覧していた。彼の側には彼の重臣達に混じり孫権と甘寧も居た。皆、攻城戦を遠目からでも見えるように騎乗していた。
「孫長沙郡太守は城攻めは苦手なようですな」
荊州遠征軍本隊の主将である星が呟いた。彼女は正宗の右隣にいた。左隣には朱里がいる。朱里は星が余計なことを口にしたことを何かいいたげな表情で見ていた。この場には孫家の人間である孫権と甘寧がいるのだから朱里の気持ちも分からないことはない。幾ら正宗が立場が上位とはいえ、わざわざ余計な恨みを自ら買う必要もないからだ。
「襄陽城は荊州防衛の要と言える堅城。この程度で落ちれば世話はない。蔡徳珪に援軍の希望はなく、我らに兵糧が尽きる可能性はない。この籠城に意味などない。いずれ襄陽城の物資も尽きていく。そうなれば遅かれ早かれ襄陽城は落ちる。こうして孫堅軍が攻めれば矢弾が消費され城に籠もる兵士達も疲
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