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送り犬
4部分:第四章
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種もやけに美味い。ビールも柿の種も宿の売店で買ったものだ。それ等を飲み食いしながらくつろいだ姿で話すのだった。時間はもう十二時を回っていた。
「思ったより早く宿に戻れましたかね」
「そうですね」
 若松さんは自分の左手の腕時計を見ながら南口さんの言葉に頷いた。
「今時分に着くと思っていましたし」
「それを考えれば上出来ですね」
「確かに」
 応えながら缶ビールを口に含む若松さんだった。既に南口さんは一本空けて二本目もかなり飲んでいる。若松さんはそれに対してまだ一本目である。二人で楽しく飲んでいた。
「それでですね」
「はい?」
 不意に南口さんが話題を変えてきた。若松産さんもそれを聞いて声をあげた。
「何かありますか?」
「さっきの犬ですよ」
 見れば南口さんの顔が探るようなものになっている。そうしてその目で語るのだった。
「さっきの犬。あれは一体」
「あの犬ですか」
「犬じゃないって仰いましたね」
「ええ」
 若松さんも真面目な顔になっていた。ビールと柿の種はそのまま飲み食いしつつも顔は真剣なものになっている。赤ら顔であってもだ。

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