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送り犬
3部分:第三章
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南口さんは若松さんに尋ねる。若松さんはパンと牛乳である。それぞれ飲み物だけが違っていた。
「それに?何ですか?」
「甲斐犬とも柴犬とも違いますね」
「どちらともですか」
「柴犬にしては大きいです」
 また大きさが問題になった。
「それにあそこまでの愛嬌があるようには見えないですし」
「愛嬌は・・・・・・確かに」
 まじまじとその生き物を見つつ呟く南口さんだった。
「どう見てもないですね」
「全くありませんね」
「ええ。何一つ」
 はっきりと答える南口さんだった。
「ありません」
「私もそう思います。絶対に柴犬ではありません」
「はい」
「最後に甲斐犬ですが」
「そちらはどうですか?」
「それにしては少し大きいです」
 またしても大きさが問題になるのだった。
「胸も甲斐犬より立派ですし」
「甲斐犬よりも」
「それに歩き方も違っていますね」
 歩き方までまじまじと見ているのだった。
「やっぱり森に馴れた歩き方ですね」
「森にですか」
「甲斐犬よりも。結局のところあれはどの犬にも似ていませんね」
「どの犬よりも?」
 南口さんは今の若松さんの言葉に思わず首を捻った。ここで二人共パンと飲み物を全て胃の中に入れ終えてしまった。気付けば目の前にやっと明るいものが見えてきた。
「あれは」
「宿ですね」
「ですね」
 その光を見て明るい顔になる二人だった。
「じゃあ後はあそこに戻って」
「お風呂に入ってお休みです」
「そうですね。けれど」
 ここでまた後ろを見る南口さんだった。見ればそこにはやはり。

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