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送り犬
2部分:第二章
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第二章

「それは。まあ」
「左様ですか」
「ええ。けれどやっぱり。ここを通るのははじめてですし」
 今度はこう述べた南口さんだった。
「やっぱり。不安ですね」
「そういうことですか」
「後ろに何かいません?」
 ここでふと後ろを振り向いてみた。
「何か。おや?」
「どうしました?」
「あれですけれど」
 後ろを振り向いた南口さんはここでその後ろを指差してみせる。若松さんもそれに応えて後ろを振り返る。するとそこにいたのは。
「あれ・・・・・・狐ですかね」
「狐にしては大きいですね」
 こう答える若松さんだった。夜だがその姿は月明かりのせいでよく見えた。そこに見えているのはどう見てもイヌ科の生き物だったからだ。
「あれは」
「犬ですかね」
「野犬ですかね」
 何でもないという若松さんの口調は相変わらずだった。
「おそらくは」
「危ないんじゃないですか?」
 南口さんはいよいよその不安が増してきた顔で若松さんに述べた。
「これって」
「ああ、あれは大丈夫ですよ」
「大丈夫って」
「一匹だけですよね」
「はい」
 見ればその通りだ。その野犬のようなものはたった一匹で二人の後をつけている。それだけだったのだ。
「間違いなく一匹だけです」
「では大丈夫です」
 また大丈夫と言い切る若松さんだった。
「一匹だけで後ろにいるのなら」」
「大丈夫なんですか」
「これで周りに一度に何匹も出て来たら危ないのですよ」
 若松さんの言葉ではこうなのだった。
「イヌ科というものはです」
「ああ、狼とかのあれですね」
「その通りです。ですが後ろから一匹だけというのは見張りでして」
「見張りですか」
「そうです。ほら、散歩とかで縄につながれていない犬にある程度の距離までおっかけられたりしますよね」
「ええ、まあ」
「それですよ」
 こう南口さんに説明するのだった。
「ですから別にね。怖がる必要はありませんよ」
「随分こういったことにも馴れているんですね」
「山を登っていれば犬にも会います」
 当然といった感じの若松さんの言葉であった。
「それはね」
「それだけですか」
「何しろ昔は今みたいに動物愛護とかいう考えはなかったですから」
 この考えは比較的最近の考えであるのだ。それまではほぼ野放しに近かった。だから色々と無茶なこともあったのである。例えばである。
「野良犬がですね」
「野良犬が」
「普通に山で生きていたりしたものですね」
「またそれはえらく物騒ですね」
 南口さんは今の若松さんの話に顔を顰めさせるのだった。
「野良犬が普通に山にいたなんて」
「飼い主がね。捨てて」
「無責任な話ですよ」
「犬だけではありませんよ。猫もです」 
 若松さんの説明はあえて感情
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