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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 21.
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「タケル」クロウは声をかけながら、2人で件の人影に近づいた。
「クロウ。それにロックオンも」振り返るタケルが、「その辺りなら好きなように歩いても大丈夫です。捜索は終わっていますから」と彼なりの安全宣言をする。
「忙しいところを悪いな。ちょっとした聞き取り調査だ。すぐに終わる」
 用件はクロウが伝え、ロックオンは「よっ、お疲れさん」と右手を挙げて5人に挨拶をするに留めた。
「何か急ぎの用でも?」
 タケルがちらりとロックオンに目をやってから、クロウだけに視線を合わせ始める。黒い眼帯をした横顔しか見る事はできないが、タケルの様子で隣に立つ男が既に左目を閉じている事を悟った。
「ああ。今、ゆうべのホワイト・アウトの時に何かを見聞きした人間がいないか調べて回ってる。怪奇現象だけに、聞いた人間と聞こえていないという人間にきっぱりと分かれててな。参考にするつもりで、ニュータイプと超能力者の感じ方を聞きに来た。覚えてるか? タケル。昨夜のあの瞬間を」
「はい」タケルが平素の顔で頷いた。「俺はあの時、マリス・クラッドを受けたゴッドマーズを下げてガイヤーから降りていました。ダイグレンの中で、…音……、音…」
「ああ、例えばだ」即否定しない少年を脈ありと捉え、クロウは一押しをかける。「チリチリとかキラキラした音、和音も有りだ。耳障りのいい一瞬の音とか」
「あ、それなら」タケルの表情が、心当たりの存在を如実に語っていた。「音は聞いています。そうだ、確かにキラキラした音だった。…もしかしたら、あれは…声?」
「声?」
 繰り返すクロウに、少年が「わからないけど、そう聞こえなくもないような」と曖昧な返事にトーンを落とす。「嬉しい時の声とか悔しい時の声とか、そんな感じのものが同時に通り過ぎました」
「何かの気持ちが乗ってたって事か」
 考えてから、「はい」とタケルが肯定した。「無機質な音とは違います。でも声という程ではなくて、その中間くらいのものです」
「他には?」
「そうですね」タケルがひとしきり記憶の引き出しを覗いてから、「いえ、何も思い出せません」と断言する。
「ありがとうな。参考になった」
 1つの大きな収穫に、クロウは心中で指を鳴らす。アテナが考えた通り、常人の横をすり抜けてゆくものを受け止める力が超能力者にはあるのだ。
 ノイズが多いというこの多元世界でタケルの能力があの瞬間正常に働いたのは、幸運と言うより他になかった。或いはギシン星人として備え持つ体質故かもしれないが、いずれにしても彼が聞いたという事実は大きい。
 アムロが提案した再接触の方向性を是とする内容ではないのか。超能力者やニュータイプの干渉によって、ZEXISと青い世界の支配者は再びコミュニケーションを成立させる事ができる。
 タケルの助力も計画に加えるべき、と報告し
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