月下に咲く薔薇 21.
[1/8]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
並んで立っている2人は、性別と身長、表情の違いこそあれ驚く程似通っていた。
桂木桂とアテナ・ヘンダーソン。それぞれ別の姓を持ち、片や軽口の多い男性と片や堅物の女性。育ちの違いも垣間見えるので、全くの他人であると紹介されれば、言われるままに納得してしまいそうな特徴が幾つもある。
なのに、こうして2人が肩を並べた途端、様々な共通点が目について周囲の方が濃い繋がりというものを意識せずにはいられなくなる。
時空の悪戯によって出会った本物の親子という話は、やはり事実なのだろう。
桂の愛機は、曲線主体の小型可変ロボット・オーガス。アテナのナイキックは、同スケールながら直線主体で、フライヤーへの変形はしない暗色の飛行可能ロボットだ。
2人揃って空中に自在の軌道を描く上、何処かしら共通する癖もある。血が伝えた同じ資質だけでなく、2人は別々の空で長時間、同じ人間と空を飛んだ事があるのかもしれない。そう思わせるものを、時として2人は披露する。
共に、空で人と出会い、空で強い絆を育むタイプだ。
普段は特にアテナには干渉せず自らの人生を楽しむ桂だが、娘に男や敵機が接近すると多少性格が変わる。勿論、オズマ程激しくはないにしろ。
その桂が、こちらの世界に現れた敵に神経を逆撫でされ、娘の分まで苛立っている。押し殺した怒りを放つ桂など、クロウは初めて目にした。多少の事では動じないZEXISとZEUTHの戦士達が、彼に場を譲って人垣を崩すのも納得がゆく。
クロウもクロウで、普段の笑顔を浮かべたまま桂の視線を正面から受け止めた。何一つはぐらかすまい、との決意が伝わるように。
アテナの視線も訴えている。経過報告の行間に埋もれてしまったものが知りたい、と。
ふと、先程聞いたアポロの言葉を思い出す。彼女にまとわりついている移り香は、ミシェルに残っているものより、クロウのものにより近いのだとか。
言うべきか? 言わねばなるまい。
「やっぱり、ダイグレンにいたんだな」ZEUTHの親子2人をきっと見据え、クロウは平時の顔で話しかける。「今、ゆうべの事であちこち聞き取り調査をしに回ってるところだ。俺の話もするから、その後で少しばかりこっちの質問に答えちゃくれないか?」
「わかった」
答えるアテナは、明らかに訳知り顔だ。質問の内容について、ある程度見当をつけている感がある。
彼女自身も疑問視しているのだろう。何故、自分は残されたのか。
中原のように自身を守る術を持たない隊員が、魔に魅入られるように連れ去られた。今からでも代わってやれるものなら、自らを差し出す覚悟はある。そんな優しい思いが、アテナの表情から滲み出ている。
クロウとロックオンで昨日の経過を一通り説明し、今朝については滑走路で発見した植物片と会議の事、そしてアポロが感じ取った異物
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ