嵐の転入生編
ターン37 鉄砲水の午後
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喋りだしてくれた。こういういかにも元気溌剌、なタイプの女の子はアカデミアではなかなか貴重な存在だから、話をしててもけっこう面白い。感情表現も豊かだし。夢想といい葵ちゃんといい、ここまで自分の感情をあけすけにしてくれることはめったにないからねえ。もっともそれはそれで、いざ感情的な面を見せてくれた時のギャップがグッとくるのは間違いないんだけど……っと、話がずれた。
「なるほど。それで、ジェネックスに準優勝して飛び級入学だっけ?なんていうか、凄いね」
「ふふん。当然よ、恋する乙女は強いんだから!」
自信満々に胸を張る彼女のカップに紅茶のおかわりを注ぎ、改めて十代の顔を思い浮かべる。あの朴念仁の十代が、この子の想いに気づいてるなんてことがあるだろうか。レイちゃんには悪いけど、まず無いだろうな。良くも悪くもデュエル馬鹿だし。
でも、この子のそこまでやる一途さは割と気に入った。
「なるほどね、なかなか洒落た答えじゃない?道のりは厳しいだろうけど、僕は応援してるよ。多分十代もそろそろおやつ食べに帰ってくると思うから、とりあえずそれまでのんびりしててよ」
「本当!?」
十代の名前を出しただけで一気に食いついてくるレイちゃんを落ち着かせていると、いきなりドアが開いた。ちょうど僕の位置からはその人物が見えるけど、背を向けて僕と向かい合うレイちゃんからは振り返らないと見えない位置だ。
「まさか、十代様?」
「んー、いや……」
満面の笑みを浮かべて振り返る前に慌てて髪を撫でつけるレイちゃんに、ああこれはちょっと荒れそうだなあ、と内心ため息をつく。案の定その真っ黒な、なぜかペンキまみれの服に身を包んだ彼がずかずかと上り込んでくる。
「よう、清明。今日からこの万丈目サンダーがまたこの寮で世話になることにしたぞ。俺の部屋はいじってないだろうな?」
「ああ、そりゃまあ……」
「えー!?ちょっと、十代様じゃないのー!?」
「む、なんだこの女は。この万丈目サンダー様より十代なんかの方がいいだと?……ってよく見たらお前、ジェネックス決勝の時の女じゃないか」
「ああ、あの時の?そんなのどうでもいいわよ、恋する乙女の気持ちを踏みにじった罪は重いんだからね、このペンキ男!」
案の定ギャーギャーと口喧嘩を始める気の強い2人を、一体どうなだめるべきか考える。唯一救いなのは、そのペンキがあらかた乾いているせいで床や机が汚れずに済むということだろう。というか、万一そんな状態で入ってきたりなんかしたら間違いなくその場で僕が崖下の海に蹴り落としている。
「とりあえず万丈目、風呂入ってきたら?どうせ洗濯するの僕なんだからさ」
「む、それもそうだな。今日のところはこれぐらいにしておいてやるが、清明の奴に感謝することだな」
「べーっだ。
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