嵐の転入生編
ターン37 鉄砲水の午後
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ンダーなどというものではなく、ただ単に全方位が弱点になっているだけだ。そのあまりのバカバカしさにさすがの彼女も、先輩は実物のカード触るデュエルじゃないと頭の回転が極端に悪くなりますね、としみじみ言うのがやっとだったほどである。
そんな出来事を思い出し、また洗脳が解けた自分を何ひとつ咎めることなくいつもの調子で『YOU KNOW』に迎え入れた彼の顔を思い出しては罪悪感が湧いてくる。その上さらに借りを重ねるような真似は図々しいだけか。そう思うも、かといって他にこの手紙の内容を相談できるような相手もいない。なにせ内容もさることながら送りつけた相手も相手なので、下手な相手に相談するとその人にまで迷惑がかかりかねないのだ。そこまで考えたところで、ふとあることに気が付いた。
「結局私も、先輩なら何とかなるって思ってるんですかね。河風先輩の癖が移っちゃいましたか」
そう考えるとなんとなく可笑しくなり、ついつい口元がほころぶ。思えば日本最大級のデュエルモンスターズ専門校、さらに全寮制というところに魅力を感じて入学する前は、まさかあんな良くも悪くも常識人の皮を被った変人が日本の高校にいるとは思ってもみなかった。
「先輩からすればいい迷惑でしょうけど、今回も頼らせてもらいますよ」
結局自分1人で考えるのは諦めて、ひょいと立ちあがった。今日は朝から頭を使いすぎたので、少々疲れました。おそらく今日も作っているであろう先輩の作ったお菓子でもかじりながら、どうせ今日もティータイムとか何とか言って淹れているであろう紅茶なり緑茶なりを飲んで休憩させてもらいますか。それが終わったらこの手紙を先輩に見せて、どうしたらいいのか考えましょう。
……甘えさせてもらってばっかりですね、私。この貸しも含めていずれどこかで返しますよ、先輩。
その4:稲石さんの場合
一方その頃、廃寮では。地縛霊の仮名稲石が、ファラオ相手に庭からむしってきた猫じゃらしをふよふよと振り回しで遊んでいた。
「ほーれほーれ、こっちこっちー」
クルクルと動く猫じゃらしを追って右へ左へ走り回るファラオだったが、突然その動きが止まった。何かを嗅ぎ付けたかのように、床に開いた穴や壁にかかる蜘蛛の巣を器用に避けながらとてとてと走ってゆく。
「おーいファラオ、そっちは危ないよー?」
『置いてかないでほしいのニャ〜』
たまたま外に出ていた大徳寺先生の魂も取り残されたかたちになってしまい、慌てて2人でその後を追う。ようやく追いついた時にはファラオは1枚の扉の前にいて、中に入りたがっているかのようにほこりまみれのそれを爪で何度も引っ掻いていた。
『稲石君、この扉はどこに繋がっているんですニャ?』
「えーっと、確か来客用の部屋だったかな?懐かしいな
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