嵐の転入生編
ターン37 鉄砲水の午後
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子寮……ついこの間までホワイト寮と呼称され、わざわざ白塗りにされていた建物をまた青く塗り直す作業の真っ最中である。同級生にして友人の明日香も今日はここを見に来ると言っていたのを朝食の席で聞いたのを思い出し、きょろきょろと辺りを見回して彼女の姿を探す。
「ん、明日香。やっほー、ってさ」
一瞬自分の名を呼ばれたことに当惑気味の表情で振り返る明日香だったが、すぐに声の主を認めて笑顔を見せる。
「あら、夢想。貴女もこれを見に来たのかしら?」
「まあね、って。こっちはどんな調子なの?だってさ」
漠然と青いペンキを塗りたくっている最中のブルー寮を指さす。といっても、作業の状況からいってまだまだ終わりそうもないことは目に見えているのだが。それでも律儀に何か答えようとした明日香だったがその言葉は結局、横から聞こえてきたより大きな声にかき消された。
「おお、天上院君!どうしたんだい、こんなところまで?」
どこか嬉しそうな態度をにじませた声の主は、どこからか持ってきたらしい工事現場用の警棒を振り回して周りの連中に指図する万丈目だ。ただ夢想が見ている限り、少なくとも今は自分も色塗りを手伝おうというつもりはないらしい。そしてこういう場合、よりあけすけに尋ねることができるのが明日香である。
「万丈目君、貴方はペンキ塗りを手伝わないのかしら?私もそうだけど、貴方にもこの白塗りの責任の一部はあるんじゃないかしら」
「う……いや、俺はジェネックス優勝者だからな。これが勝者の特権というものだ」
「別に疑うつもりはないけれど、一体いつの間に優勝できるだけ集めていたのかしらね。あ、そこは危ないわよ!」
「何?ぶあっ!?」
目の前に広がっているであろう悲惨な光景をさすがに直視していられなくなり、そこまで聞いたあたりで視線をつっとそらす夢想。計ったように落ちてきたバケツ一杯もの青ペンキを頭からかぶった万丈目がぷりぷりと怒りながらレッド寮の方へ歩き出したときも、最後までそちらの方は見ないでおいてあげた。それがプライドの高い彼に対する優しさだと判断したのだ。
「まったく、自分からオベリスクブルーに戻りたいって言い出したのに……大丈夫かしら?」
「うーん、よっぽど大丈夫だと思うけどね、ってさ。あ、でもせっかくだし私もレッド寮には行こうかな、なんだって。今の時間なら、清明ならお茶菓子も出してくれると思うし。明日香もどう、一緒に来る?って」
せっかくなら自分1人よりも、人数が多い方がいいだろう。とはいえ何かと忙しい彼女のことだからあまり期待はしていなかったが、意外にもあっさり頷いた。
「そうね。迷惑じゃなければ、たまには私も行ってみようかしら。十代のNも清明君のグレイドルも、まだ話にしか聞いたことがない
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