嵐の転入生編
ターン37 鉄砲水の午後
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。すると、どこか慌てたように彼女も頭を下げた。
「あ、こんにちは!ボクは早乙女レイ。本当はまだ無理なんだけど、この間のジェネックスで準優勝したのが認められて飛び級でこのアカデミア高等部に入学したんだ。それで、今の話本当!?そんな〜、せっかく大急ぎで走ってきたのに、十代様いらっしゃらないのー!?」
「えっと……まあなに、とりあえず入ってよ。立ち話もなんだし、僕も今一つ話が見えてこないし」
「それじゃ遠慮なく。えっと……」
「ああ、僕はオシリスレッド3年の遊野清明。よろしく」
しかし驚いた、もうオシリスレッドの新入生は僕らの代で終わりだとばっかり思ってたのに。それにこの子やけに十代に心酔してるみたいだけど、このレイちゃんと十代の間には一体何があったんだろう。昼ご飯も終わったばかりだけど、せっかくだから少し早めのティータイムとでも洒落込みながら聞かせてもらうとしようかな。洗い物の前に緑茶でも飲もうかと思って火にかけてあったやかんを横目で見ながら、急遽お茶の葉を紅茶に取り換える。
退屈でのんびりした時間になると思ったけど、楽しい話ができそうな午後になりそうだ。
その2:河風夢想の場合
その日彼女は、特にすることもなく暇だったので散歩に出ることにした。すっきりと晴れた気持ちのいい昼下がりの空の下、特に意味もなく彼女の思考は修学旅行の日のことに向かう。
「貴方は今、何を考えてるのかな、ってさ。清明……」
あの日、自由行動の時間でわざわざ付き合わせた隣町での墓参り。そこで教えた、彼だけには知って欲しいと思った昔の話。いまだに、彼女のこの語尾は取れない。それはつまり、いまだに彼女自身は10年以上前の事故のショックを引きずっていて喋ることができないということだ。ふと思い立って口を開き、深く息を吸い込んで自分1人の力で言葉を話そうとしてみる。だが、
「あ……あぁ……ああ………はぁ、だって」
いくら神経を集中させても、喉に何かがつかえているかのように声とは呼べない程度の音しか出てこない。まだ今日も、彼女のショックは癒えていないようだ。そして今の自分に変わってこの口を動かしている「何か」も、その正体も目的もいまだ一切が不明のままだ。このままずるずると今の生活を続けていてはいけない。いつまでも怪しい力に頼るのではなく、自分の声を取り戻す必要がある。それはわかっているのだが、かといってそのあてはない。むしろ下手なことをすると、この力すら彼女から抜けてしまうかもしれない。その恐怖感が、1日また1日と問題を先延ばしにしている。
「無双の女王、なんて私には過ぎた名前なんだけどなぁ、なんだって」
自嘲気味に漏らしたところで、いつの間にか見知った場所に来ていたことに気が付いた。そこはオベリスクブルー男
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