嵐の転入生編
ターン37 鉄砲水の午後
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背も伸び雰囲気も大人びていく中、僕だけは去年から1ミリ、1グラムたりとも変わっていない。いや、この表現だと語弊がある。もっと正確に言うと、僕だけ入学した時から肉体的には何一つ変化していないのだ。
とはいえ、これに関しては全くの原因不明というわけではない。先代ダークシグナーが全員早死にしたとの理由でチャクチャルさんもイマイチ自信なさげだったけれど、どうも1度僕の命が尽きて、直後にダークシグナーとなって甦った2年前のあの瞬間。あそこを境目として僕の老化、というより成長は完全にストップしたらしいのだ。髪や爪なんかは普通に伸びるから代謝が完全にストップしたわけではないみたいだけど、少なくとも成長期にふさわしいほどの変化は来ない。だから僕はもう皆と一緒に年を取っていくことはできないし、それは黙っていたって遅かれ早かればれることだろう。
『マスター』
その声に込められたすまなさそうな様子を察知して、謝罪の言葉が飛んでくる前に先手を打つ。
「いいよ、チャクチャルさんが謝らなくても。この話は何回かしなかったっけ?僕は生き返ったことを後悔なんてしてないし、あそこで終わるはずだった僕の人生にもう1回チャンスをくれたチャクチャルさんには本当に感謝してるんだから。それにほら、本当に目立ってどうしようもなくなったら山にでもこもって仙人の真似事でもやってみるさ」
できる限り元気に明るく言ったつもりだったが、チャクチャルさんのことは誤魔化せなかったらしい。いや、どうやらチャクチャルさんだけではなかったようだ。ふと見渡せば食堂の中は僕のデッキからいつの間にか出てきていた精霊でいっぱいになっていて、その不安げにこっちを見てくる様子に思わず笑いがこぼれる。
「ふふっ、ありがとう。皆、これからもよろしく頼むよ」
代表として、とりあえず一番手近なところにいたサッカーの頭をよしよしと撫でる。先延ばしといえばそれまでだけど、今心配することでもない。少なくとも今は、こうやって精霊や友人と一緒に日々を過ごせることを喜ぼう。
ちょうどその時、チャイムの鳴る音がした。そして、このボロ屋には似つかない少女の声。
「すみませーん。ボク、じゃなくて私、今日からここにお世話になるんですけど。十代様はいらっしゃいます?」
「………ああ、ハイハーイ。今出ますよー」
聞きなれない言葉に一瞬思考がフリーズするも、すぐに気を取り直してインターホンなんて洒落たものはついてないドアに向かう。その前に立っていたのは、見た感じ翔とどっこいどっこいか下手するとそれより一回り下ぐらいの妙に小さい、とても高1には見えないような女の子。
「えっと、どちら様ですか?それと遊城十代ならついさっき、洗い物もせずにどっか行きましたよ」
何者かわからないので、とりあえず敬語
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