九十五 敵か味方か
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の隠密活動を知り得るシカマルの存在をサスケは知らない。サスケの里抜けは急遽決まった故に、流石の綱手も詳しい事までは彼に伝えられなかったのである。
追い忍の一人にだけはサスケ本来の目的を教えるとは聞いたものの、それが誰かまでは知らないのだ。一応綱手との連絡手段は持っているが、大蛇丸の部下が傍にいる現状ではそれも適わない。
(――と言っても、ナルのこの表情を見る限り、知ってるわけねぇか…)
大体、ナルは良くも悪くも正直な人間だ。加えて、嘘や偽りなどとは無縁の性格故に、ナルがサスケの隠密活動を知っている可能性は低い。
大方、自分が里抜けしたと聞いて慌てて追って来たのだろうと見当づけて、サスケはちくりと胸が痛んだ。
同時に少し、嬉しくも思う。
木ノ葉からわざわざ此処まで追い駆けて来てくれたその事実を目の当たりにし、サスケは自然と緩みそうになる口許を懸命に耐えた。わざと話題を変える。
「知り合いか?」
ナルとアマル、二人に対しての質問だったが、答えたのはナルだけだった。
「…綱手のばぁちゃんを捜していた時に会ったんだってばよ」
ほとんど囁きに近い返答を返しながら、ナルはちらりとアマルの様子を窺った。無言を貫く彼女から何の反応も得られず、落胆する。
アマルを悲しげに見やってから、ようやくナルはハッと顔を上げた。サスケを指差す。
「そ、それよりお前だってばよ、サスケ!何やってんだってば!?ほらぁ、さっさと木ノ葉に帰んぜっ」
「……………」
冗談染みた物言いで笑うナルからサスケは顔を逸らした。滝の轟音より重い空気がずしりとその場に満ちる。
沈黙に耐え切れず、ナルは猶言い募った。
「なぁ帰ろーぜ、サスケ。皆、心配してんだってばよ…?」
徐々に不安げな声音で、それでも一生懸命諭してくるナルの顔を直視出来ず、サスケはくるりと背を向けた。
スパイという任務を忘れて、今にもナルと共に帰りたい本心を押し隠し、わざと冷たく突き放す。
「お前こそ帰れ―――もう、俺に構うな」
早くこの場から立ち去ってほしい。
大蛇丸の許へ潜入するという己の任務を忘れてしまう前に。
イタチと同じ隠密活動の道を選んだ決意が鈍ってしまう前に。
兄の仇たるうずまきナルトへの復讐心が薄れてしまうその前に。
しかしながらサスケの想いに反して、事情を知らぬナルの想いは変わらなかった。
その上、一度最悪な別れを迎えたアマルまでいるからこそ、ナルの決意はむしろ強くなる。
「…ッ、なんで……なんでなんだってばよっ!?」
くしゃり、と泣きそうな顔でナルが咆哮した。懇願の色を多分に含んだ声音がサスケと、そしてアマルの耳朶を強く打つ。
「一緒に…っ、木ノ葉に帰ろうってばよ!――――サスケ…っ!アマル!!」
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