8部分:第八章
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第八章
「また見つければいいさ」
「わかりました。それじゃあ今は」
「帰ろうか」
何もないとなればもう留まっている理由はなかった。帰るだけだった。
二人はすぐに帰路についた。しかしその足取りは軽かった。ポンスは確かに見つからなかったことに気落ちしていたが足取りに影響する程ではなかったのだ。
それは何故かというとだった。シッドが明るく声をかけてくれるからだ。彼女のその明るさが今の気落ちしようとする彼を支えているのであった。
「まずは大学に帰って」
「うん」
「それで休みましょう」
「大学には悪いことをしているな」
こんなふうにも思ったポンスだった。
「かなりね」
「学生の人達にあまり講義をしていないからですか」
「研究と称してこうしてエル=ドラードばかり探しているからね」
だからだというのだ。
「いや、これはかなり悪いことだよ」
「そうかも知れませんね。けれど」
「けれど?」
「お給料の分はちゃんと講義をされているじゃないですか」
こうポンスに話すのだった。一応講義が十三回あれば十回は出ている。彼にしても夏休みやそういう時間を選んで探索に出るようにしているのである。
「ですから」
「いいと思うべきかな」
「そうですよ」
まさにそうだというのだった。
「そんなに悪く考えることでもないですよ」
「そういうものかな」
「何はともあれまずは戻りましょう」
またこう言ってきたシッドだった。
「それで帰ったら」
「帰ったら?」
「飲みませんか」
飲もうかというのだ。
「ビールか何か」
「いや、ビールはちょっと」
ビールを言われると困った顔になるポンスだった。
「止めておくよ」
「どうしてですか?」
「ビールはねえ。痛風に悪いから」
だからだというのだった。
「最近あれが怖くなってきてね」
「ああ、それでなんですか」
「足の親指の付け根が凄く痛むらしいね」
痛風の有名な症状である。まずはそれからはじまるのだ。
「確か」
「そうらしいですね。もう泣く程だとか」
「だからだよ。そうなったら笑うに笑えないから」
「じゃあビールは」
「止めておくよ」
あらためて言うポンスだった。
「飲むのならワインにするよ」
「ワインですか。そっちの方がいいかも知れませんね」
「健康の為にはね」
それの方がというのだった。
「それでどうかな」
「はい、わかりました」
ポンスのその言葉を受けるシッドだった。
「それじゃ帰ったらワインを」
「うん、そうだな」
ここでポンスはワインについて言った。
「チリのワインがいいな」
「チリのですか」
「あれがまた美味いんだよ」
今は山の中だがもうワインのことについて話をしていた。
「飲みやすいし。
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