5部分:第五章
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第五章
「ここにいたらそれだけで」
「それじゃあもっと先に進んでだね」
「はい」
また応えるシッドだった。
「この奇麗な風景を見てですね」
「行こうか」
先に行くことを促した。
「先にも奇麗な風景があるしね」
「アンデスって不思議ですよね」
シッドはその風景を見続けながら今度はこんな言葉を出した。
「とても」
「不思議かな」
「不思議に思います。何処まで行ってもこんなに奇麗な世界が広がってますから」
だからだというのだ。
「とても」
「そうだね。言われてみればね」
その言葉に頷くようになったポンスだった。
「アンデスは。何処までも澄んでいて」
「それが不思議ですよね。不思議な奇麗さですよね」
「うん、本当にね」
歩きながらだ。その都度景色は変わっていく。だがその美しさはそのままだ。その美しさは何処まで行っても変わらないのだった。
「そしてその果てには」
「幸せがあります」
シッドはここでは幸せと言うのだった。
「幸せが」
「そうだね。幸せがあるね」
「はい」
また笑顔だった。険しい山を歩きながらだったがそれでもだった。笑顔であった。
「私達はそこに向かってるんですね」
「そうだね。それじゃあ」
「先に」
今度はシッドから誘ってきた。
「行きましょう」
「うん、幸せに向かって」
こう言い合い先に進んでいく。それから二日程進んだ。山を一つ越えまた一つ越えだった。時折休憩し睡眠を取ったりしながらだった。この時は眠りから覚めてそのうえで二人で朝のパンを食べながらそのうえで二人で話をしているのであった。
「予定ですと」
「うん、明日だね」
「はい、明日です」
シッドからの言葉だった。
「明日エル=ドラードです」
「今度は見つかるかな」
「見つかりますよ」
明るい言葉だった。何処までも。
「絶対に」
「そうだね。見つかるよね」
「幸せがありますよ」
そこにあるというのだった。その幸せが。
「それを見つけに行きましょう」
「うん、絶対にね」
ポンスもまた微笑んでいた。髭だらけの顔が柔らかになっている。
「それじゃあこれからだけれど」
「これから?」
「もうすぐにテントを収めてね」
「はい、それからです」
「行こう」
これもいつも通りだが今はそれを言い合うのだった。
「幸せに向かって、ってなるね」
「はい。明日ですよ」
シッドはパンの最後の一欠片を口の中に入れた。それをあっためたコーヒーで流し込んで。そうしてポンスもそれは同じだった。
「明日遂にですよ」
「エル=ドラードか」
彼は言った。
「今度こそだよね」
「はい、今度こそです」
そうだというのだった。
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