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竜から妖精へ………
第0話 竜
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界を滅ぼしかねない。……そんなことは御免だ』


 そう言って翼を広げた。このまま相対をし続ければ、どうなるか 見るよりも明らかだ。


『あくまでも お前は 害虫どもの味方……と言うのだな』


 黒竜は、そう呟いた。
 その目は…、初めて少し、悲しみのような 切ないような そんな感情が読み取れていた。


『ああ、 オレはお前の前から姿を消す… もう、会うことは無いだろう。……だが、もし 年月が経ち、再び合間見えた時。 その時も、お前が……人間を襲っていると言うのなら……』


 もう片方の竜のその目も、黒竜と同じ少し悲しみのようなものが含まれていた。


『オレは 再びお前を止める。いや 何度でも止めてやる。必ずな……。 この命を懸けてでも。捨ててでも。それだけは約束をしよう』


 そう言うと同時に、逸らせていた黒竜の眼を再び見た。


『………』


 納得は出来ない。 してないが。その目を見れば覚悟の程は伝わってきた。

 もう、何を言っても、 自分の真意を変えたりはしないだろう。何故、そう確信できるのか、それは自身がそうだからだ。何を言っても、言われても変えないから。


『ふん……。 約束は出来ない。今も我は奴らを害虫(クズ)としか思えんのでな、……が、我と同じである貴様と敵対するのも、複雑だ』


 そう言って、黒竜は、空中へと飛びあがった。


『……貴様ともう合間見えることが無いことを願うとしよう。……ゼルディウス』


 そして、その言葉を最後に飛び去っていった。その速度はまるで光。ものの数秒でその巨体の影も形も無くなっていた。


『………さらばだ。アクノロギア』


 ゼルディウスも、その言葉を最後に、まるでこの場にいなかったかの様に、姿を消した。









 黒竜アクノロギアと別れてから、一体どれだけの時間が経っただろうか。
 その間、ゼルディウスは ただただ人の事を考えていた。

 生まれて初めて興味を持ち、人間の世界へと向かった時の事。……そして、出会った人間達の事。


――……出会いと別れを。


『人間、か………』


 姿を消した先、霊峰の頂きで、ゼルディウスはそう呟いた。


『随分と…、長い間、思い出していたようだ……。いや 夢を見ていた、と言うのが正しい。……まだ見ていたい。 まだ、足りないんだが、……仕方がないか』


 ゆっくりと立ち上がったその巨大な竜の身体が淡く光を放ち出していた。そして、ゆっくりと その光は竜の身体を包み込み、消していく。


『……もう本当に限界、か。あの時 アクノロギアに悟られなくて良かった、な。……オレがもう最後で
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