第二百三十二話 本能寺においてその十二
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「そこからは島という島を手に入れてじゃ」
「南に進みますか」
「上様はそうお考えじゃ、その途中で南蛮とも戦になるやも知れぬが」
「南蛮と」
「気付いておろう、南蛮の者の中には」
「本朝以上に」
道安もここで顔を曇らせた。
「よからぬ坊主がおりますな」
「堺にも来ておるな」
「はい、教えは広めますが」
「それは隠れ蓑でな」
「本朝を侵そうとしていますな」
「そうした考えの者がおるな」
「そうした者達とはですか」
道安はあえて父に問うた。
「上様は」
「戦うおつもりじゃ」
「左様ですか」
「かなり激しい戦になろうともな」
「そういえば鉄甲船は」
「あの船は本朝の外にも出られる」
信長が毛利との戦の時に築き今も港にあるこの船達はというのだ。
「琉球まで行けるしな」
「あの島にも」
「行ける」
そちらにもというのだ。
「だからな」
「上様はそうお考えなのじゃ」
「大きいですな」
「そうじゃな、わしもこのお考えを知って最初は驚いた」
「天下統一の先の政も見られていて」
「さらにその先もじゃ」
「お考えとは」
道安も唸って言った。
「流石は上様です」
「全くじゃ、ではな」
「はい、これより」
「堺に戻り徳川様をお迎えしようぞ」
そしてもてなそうというのだ、そうした話をしてだった。
利休は道安と共に堺に戻るのだった、彼は大坂に着いてから休む間もなく堺に向かい家康の応対をするのだった。
だが堺に着いてだ、ふと彼はこうも言った。
「これは」
「父上、今度はどうされました」
「風を感じた」
「風を」
「うむ、それをな」
まさにというのだ。
「感じた」
「そういえば少し」
道安も肌で感じて言った。
「風がある感じですな」
「そうであろう」
「小さいですが妙に騒がしい」
「そんな感じじゃな」
「この様な風が起こるとは」
「やはり何かあるのかのう」
利休は自然と鋭い目になっていた。
「これより」
「父上は都から戻られる間そう言われていますが」
「まあとにかくな」
「堺に戻ってですな」
「徳川様へのおもてなしじゃ」
「さすれば」
このことに話を移して堺に入った、その風を感じながら。
第二百三十二話 完
2015・6・19
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