第二百三十二話 本能寺においてその十
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「楽しまれるべきです」
「茶も菓子も今は高いがな」
「しかしどちらもですな」
「わしは誰もが好きなだけ食える天下にする」
笑っての言葉だった。
「必ずな」
「それが上様の望まれる天下ですな」
「わし一人が茶や菓子を楽しんでもな」
そうしたことをしてもというのだ。
「面白くもない、誰もがそうしたものを楽しめる世でなければ」
「だから茶も大々的に植えられ」
「あと果物も植えさせてな」
「砂糖も」
「琉球から買い、な」
「本朝にもですな」
「持ち込んでな」
そして栽培してというのだ、砂糖が出来るものを。
「作りたいのじゃ」
「そうなのですな」
「そうした世にする、是非な」
信長は笑って利休に話した、そしてだった。
そうした話をしながらだった、信長は利休を送ったのだった。利休は都を出て川から船に乗りまずは大坂に向かった。
その時にだ、彼は船の中で長子の千道安、二条城で信忠に茶を淹れていた彼にこんなことを言ったのだった。
「さて、堺に戻るとな」
「徳川殿にな」
「お茶を淹れる、しかしな」
「しかしとは」
「徳川殿を堺から無事に送り出そう」
こう道安に言うのだった。
「何があろうともな」
「?父上それはどういうことでしょうか」
道安、父によく似た顔の彼は父の言葉に怪訝な顔で返した。
「一体」
「だから言った通りじゃ」
「堺からですか」
「うむ、堺では何もなくな」
「そうですか、しかしです」
「堺は今は穏やかだというのじゃな」
「町のならず者さえです」
そうした者達すらというのだ。
「今では数を減らし」
「穏やかな町になっているな」
「はい、それで何故その様なことを」
「それでもじゃ、堺には色々な者が出入りしておる」
険しい顔でだ、利休は道安に言った。
「だからじゃ」
「不埒者、徳川殿に悪意を持つ者がですか」
「おるやも知れぬ」
だからというのだ。
「無事にな」
「徳川殿をですか」
「堺でおもてなしをしてじゃ」
「堺からですか」
「出てもらうのじゃ」
「わかりました」
道安は怪訝な顔で自身の父に答えた。
「さすれば」
「それではな」
「その様に」
こう話してだ、道安は父の言葉の意味がわからなかったがその通りにすると約束してだった。それからであった。
あらためてだ、彼は利休にこんなことを話した。
「明日には大坂に着きますが」
「船で進めばな」
「いや、大坂もです」
「随分と賑わってきたな」
「堺が海の玄関になってな」
「そして天下から人が集まり」
「賑やかになっておるな」
「まさに天下の台所にです」
そうした場所にというのだ。
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