第二百三十二話 本能寺においてその九
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「しかしですな」
「うむ、喜ばぬ」
「それは確かに素晴らしいことですが」
とかく質素に務める、このことの美徳は利休も認めることだった。
しかしだ、利休は別の視点から信長に答えた。
「もてなさせて頂く方としましては」
「贅を尽くしてこそと思うからな」
「それがどうも」
どうにもというのだ。
「がっかりするものがあります」
「そうじゃな、そのことはわかっておくことじゃ」
「では普通の膳に酒に」
「菓子もな」
「普通のものを、ただ素材はよいものを使います」
「素材をか」
「料理の品自体は馳走でなくとも」
しかしというのだ。
「素材と作る料理人の腕はです」
「堺の中でもよりをかけたな」
「そうしたものにします」
「それがよいな、あと竹千代は確かに贅沢は好まぬが」
だがそれでもというのだ。
「味噌と揚げたものは好きじゃ」
「そうしたものはですな」
「それは出すとよい」
「わかりました、では」
「そうしたものを出して竹千代を楽しませてやれ」
「さすれば」
「あ奴とは長い付き合いじゃ」
信長は家康に対して親しみを込め笑みで話した。
「だからな」
「それで、ですな」
「うむ、あ奴が喜んでくれる嬉しい」
「では徳川殿に心から楽しんでもらいます」
「そうしてくれ、頼んだぞ」
「さすれば」
「さて、わしはこのまま都におる」
即ち本能寺にというのだ。
「やることが終われば帰るがな」
「その前に、ですな」
「何かあるやもな」
今度は楽しげな笑みでだ、信長は言葉を出した。
「そしてその時はな」
「その打っておいた手で、ですな」
「対する」
「ではそのことも見させて頂きます」
「また安土に来るのじゃ」
信長は笑って利休にこうも話した。
「そして安土を楽しみな」
「それがしの茶をですな」
「また飲ませてもらう、よいな」
「さすれば」
「そして大坂にも行くからな」
「そこでもですな」
「飲ませてもらうぞ」
利休が淹れた茶をというのだ。
「またな」
「上様はとかくお茶がお好きですな」
「大好きじゃ、菓子もな」
茶と共に出されるそれもというのだ。
「そちらもな」
「甘いものもお好きですし」
「そうじゃ、どちらもな」
「上様はお酒は口にされないですな」
「昔からな、酒を飲むとな」
「ほんの一口で、ですな」
「頭が痛くなる、わしは酒は駄目じゃ」
それが信長だ、だから彼は酒を飲まないのだ。酒が出る宴の時も酒は決して口にはしない。水や茶を飲んでいるのだ。
「そうしておる」
「そうですな、しかしそれもです」
「悪いことではないな」
「酒は飲めぬ方は飲めませぬ」
それはどうしてもというのだ、体質的にそうした者がおり信長もまたそうした体質の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ