第二百三十二話 本能寺においてその七
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「その琉球からの交易で」
「ううむ、左様でおじゃるか」
「そしてこの菓子の様なものがでおじゃるか」
「作られるでおじゃるか」
「そして食べられるでおじゃるか」
「それがし甘いものは大好物でしてな」
信長は酒は飲めない、しかし甘いものと茶は大好きだ。それで余計に情熱を込めてそのうえで公家達に語るのだ。
「それ故に是非共」
「砂糖を安く多く手に入る様にして」
「しかも本朝でも作られる」
「そうされるでおじゃるか」
「前右府殿は」
「そう考えです」
こう言ってだ、そして。
信長自身も菓子を食ってだ、笑って言った。
「ふむ、美味い」
「そうでおじゃる、この様な菓子ははじめてでおじゃる」
「まことに美味でおじゃる」
「全くでおじゃる」
「前右府殿もどんどん召し上がられるでおじゃる」
「さすれば」
信長もまたその菓子を楽しんだ、そうして茶会を楽しんでだった。
茶会を無事に終えて公家達が終わってからだ。彼は利休に言った。
「さて、御主はな」
「はい、このまま本能寺に残るのですな」
「いや、御主は出よ」
「それがしは、ですか」
「堺に戻れ、すぐにな」
「そうせよと」
「そして堺が騒がしくなればまとめよ」
堺の豪商の家の一人であり今や町の最大の顔役であるからだ。
「よいな」
「騒がしくなれば」
「その時はな、よいな」
「まさか上様は」
ここでだ、利休は察して信長に問うた。
「これより」
「察したか」
「おおよそですが」
「御主も気付いておったか、天下のことに」
「前から不思議に思っていました」
怪訝な顔になってだ、利休は信長に答えた。
「この天下は表と裏があり」
「裏にはな」
「妙な者達は潜んでいました」
「神武帝が大和に入られた頃よりな」
「はい、いました」
まさにというのだ。
「そしてそれの者達は」
「今もじゃな」
「はい、おりますな」
「そして天下に害を為そうとしておる」
「これよりその者達を」
「倒す、だからな」
「ここは上様ご自身が」
利休の言葉が鋭くなった、これまでの口調が一変していた。
「囮となられていますか」
「そうじゃ、しかしな」
「囮でもですな」
「わしは既に手を幾つも打っておる」
「だからですな」
「何があっても死なぬ、奇妙もな」
「奇妙様もまた」
利休は信長のその言葉に今度は安心した様にして言った。
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