巻ノ二十一 浜松での出会いその十三
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「どの様なことでもされる」
「謀においても」
「そしてそれが、ですな」
「よくはない」
「そういうことですな」
「そう思う、崇伝殿はどうも近頃徳川家に文を送っておられる様じゃが」
このことにもだ、浪人は顔を曇らせて言う。
「まさかと思うがな」
「徳川家に仕えたい」
「そうなのでしょうか」
「あのお二人だけで沢山じゃ」
謀、それも汚いものを好む者達はというのだ。
「徳川家でそうした方は」
「徳川家は義の家」
「律儀を旨としております」
「そこに義の欠片もない方がこれ以上おられては」
「なりませぬな」
「わしはこれまで多くの人を見てきた」
ここでこうも言った浪人だった。
「その中でもあのお二人と崇伝殿はじゃ」
「とりわけ、ですな」
「義のない方」
「左様ですな」
「だからじゃ、崇伝殿には来て欲しくない」
徳川家にというのだ。
「本当にそう思うわ、しかしそれはじゃ」
「家康様がお決めになることですな」
「そうじゃ」
こう周りに答えた。
「結局はな」
「あのお二人にしても家中では評判が悪いですが」
「それもすこぶる」
「特に本多様がです」
四天王の中でも武勇を知られた彼は、というのだ。
「ご一族でありながら」
「もう毛虫の様に嫌っておられます」
「それでも家康様はお二人の話を聞かれます」
「何かをされる時は」
「謀が必要なのも確かじゃしな」
浪人はこのことはわかっていた、それで影の中にいる目で遠くを見つつそのうえで周りの者達に言うのだった。
「だからな」
「それで、ですな」
「家康様もおふたりの話を聞かれる」
「そういうことですな」
「そうじゃ、確かにわしもお二人、崇伝殿は好かぬが」
それでもというのだ。
「必要な方々であるのも確か」
「では崇伝殿も」
「当家に入られるかもですか」
「徳川家に」
「そうやもな」
こうしたことを話してだった、そのうえで。
浪人は幸村達が去った浜松からだ、自分達もだった。
「でjは駿府に戻ろう」
「はい、我等の道を使い」
「そうしましょうぞ」
周りも応えてだった、そのうえで。
一行は影の中に消えた、そして後には何も残っていなかった。
巻ノ二十一 完
2015・8・25
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