8部分:第八章
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第八章
「二十、ありますね」
「そうじゃな」
博士は真剣な顔でドウモト弟の言葉に頷いた。
泳いでいるのでそれで身体がうねっている。しかしそれを入れてもだ。優にそれだけの大きさがあるのは間違いなかった。
「あるのう」
「じゃあ博士」
ここでパンチョは横にいる博士に対して声をかけた。
「すぐに写真を撮りますよ」
「わしも撮る」
言いながら自分で写真を撮る博士だった。
そうして二人で、だった。横を泳ぐその大蛇の写真を次々に撮っていく。忽ちのうちにそれぞれ十枚単位で写真を撮ってしまった。
カメラのフィルムがなくなるまで撮ってである。博士は満足した声で言った。
「これでよしじゃ」
「終わりですね」
「うむ」
ドウモト兄の言葉にしっかりとした顔と声で頷く。
「これでよい」
「捕まえないんですか?」
ドウモト兄は彼にこうも尋ねてきた。
「それはしないんですか?」
「ああ、それはいい」
やはり捕まえようとはしない。ただ写真に撮るだけでいいというのである。
「これだけ写真があれば大学に帰ってからじっくりと検証できるからのう」
「だからいいんですか」
「うむ。それにじゃ」
また言う博士であった。
「捕まえるのも気の毒じゃ」
「そうですか」
彼等のこの話を聞こえたのであろうか。蛇の耳では聞こえない筈であるが。横を泳いでいるその大蛇は今の博士の言葉に不意に顔を向けてきたのである。
だが博士はそれには気付かない。船にいる誰もがである。そのうえで話を続けていた。
「それはいいんですか」
「野生は野生のままでいるのがいいんじゃよ」
こう言ってやはり捕まえようとしないのであった。
「それでのう」
「わかりました。じゃあ後はもう帰りますか」
「見つけることができてしかも写真に多く撮れた」
博士は満足していた。パンチョもである。
「ではもう用はない。いざ帰還じゃ」
「はい、それじゃあ」
こうしてクルーザーを引き返させる博士であった。彼等は船を反転させこれまで来た道を帰る。しかしこの時その後ろを蛇が見送っていたことには気付いていなかった。
その夜彼等は船の中で祝賀会を開いていた。言うまでもなくアナコンダを見つけてその写真を多く撮ることができたことへの祝いである。
四人、ドウモト兄弟も入れて全員で楽しくビンガに肉を食べて祝っている。船の操縦は自動操縦にして気楽なものであった。
「さあ、あとはですね」
「大学に帰ってじゃな」
「はい」
パンチョはことさら陽気に笑ってビンガをラッパ飲みしている。
「検証して論文を書くだけですけれど」
「絶対にいけるぞ」
杯のビンガを一気に飲み干してから言う博士であった。その顔は真っ赤になっている。
「世紀の大発見じゃぞ」
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