暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
孤独を歌う者 1
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
せる為に、アリアを利用してたのか」
「厳密に言えば生き返りとは違う。『生まれ変わり』のほうが表現としては的確か。元々、アリアがマリアから受け継いだ『退魔』と『治癒』の力は神々が彼に授けていた祝福だ。彼に返すのは当然だろう?」
「だから、実の娘を孕ませるってか? アホかお前。生まれ変わり? バカ言ってんじゃねぇよ。死んだヤツは何をどうしたって二度と戻ってこない。力を渡そうが、記憶を受け継ごうが、産まれてくる子供は別人だ。お前らがどんな関係かは知らないが、諦めろ。ソイツは絶対に戻らない」

 金色の髪を撫でる手が、ピタッと止まる。

「アルフリードは俺の敵だ。俺が殺した」
「は?」

 横顔から笑みが消えた。
 立ち上がったベゼドラと幼女と金色の何かが、警戒して身構える。

 ……やめとけって。
 私でも判ったってのに、まだ解んないのか?
 ()()()()()()()()()()攻撃してくるんだぞ、コイツ。

「自分で殺しておいて呼び戻そうとしてんのかよ。勝手なヤツだな」
「お前達が見てきた世界に、『勝手ではない者』は、一人でも居たか?」
「…………いねぇな」

 クロスツェルも、ベゼドラも。
 小さいアリアを神殿に放置したらしい母親とかいうヤツも。
 最低最悪な形で実の娘を利用したがってるバカ親父も。
 アリアも、アリアが作った宗教団体の信徒達も。
 この私も。
 どこをどう見たって、結局は自分勝手なヤツばっかりだ。

「けどな。我を張るにしたって、踏み越えちゃいけない、絶対に守らなきゃいけない、最低限の境界線ってモンがあるだろうが。子供じゃあるまいし、誰かが勝手にしてるから、自分も勝手にして良いんだ! とか、思うなよ」

(お前もよく聴け、アリア。皆が互いに支え合う優しい世界、だったか? 解らなくもねぇよ、そういうの。私だってクロスツェルに拾われたおかげでどれだけ救われたか。でもさ)

「自分が我を通せばその分誰かが傷付く。苦しむんだ。それでも譲れないと思うなら、相応の覚悟と責任を負わなきゃいけない」

 殺したら死ぬ。
 生き返らない。
 取り返しがつかない。

 死んだヤツとは、もう二度と会えないし。
 ソイツから続く筈だった後世の命も全部、消えちまう。
 ソイツを大切にしてた関係者達も苦しむ。哀しむ。
 それこそ殺意を抱いて、憎む。
 殺したら、その全部を背負わなきゃいけない。
 忘れることも投げ出すことも、当然逃げ出すことなんかしちゃいけない。

 殺した事実は、罪を償おうと何をしようと、絶対に。
 なかったことにはできないんだ。

「逆に言えば!」

(何が正しくて間違ってるかなんて難しくて
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ