11.姉ちゃんが消えてから
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ことが出来ない。もう一度頭をクシャッと撫でて欲しかった。でも撫でてもらうことはもう叶わない。姉ちゃんの声が聞きたくて、姉ちゃんを何度もクリックする。でも、返ってくる返事は定型文の使い回しで、もっといろんな言葉を聞きたいのに、それももう聞けない。
涙が止まらない。喉が痛い。心臓を誰かに掴まれているかのような痛みが襲い、何度も何度もシャクリ上げた。鼻水が垂れ、呼吸することも難しいほどに涙が止まらなかった。
「お、おいシュウ……」
あまりの僕の変わりように心配になったのか、岸田が声をかけてきた。
「ご……ごめん……」
「い、いや……別にいいけど……」
「と、とりあえずこれは返す……ごめん岸田……見せてくれてありがとう」
「…ぉお、そ、そうか」
涙でぐしゃぐしゃになった両手でノートパソコンを岸田に返した後、僕はティッシュを何枚か取って鼻をかみ、もう一度ティッシュを数枚取って手を拭いた。僕からパソコンを受け取った岸田は、『せっかく繋いだし、とりあえず1回出撃させるか……』と言いながら艦隊を編成し直しているらしく、以前に岸田の家で聞いた艦隊を編成する艦娘を選択したときの『ダン!』という音が聞こえてきた。
『気合! 入れて!! 行きます!!!』
ティッシュを数枚取り、岸田のノートパソコンに改めて目をやった。
「岸田、パソコン汚れてない?」
「ああ問題ない。大丈夫だ」
「そっか。……なぁ岸田?」
「ん?」
ノートパソコンの画面から目を離さない岸田の顔を両手で挟み、強引に僕の方に向けた。岸田は相当びっくりしているようで、なにやらハニービーンズの店長に壁ドンされているかのような顔をして取り乱している。
「なッ……?! シュウちょっと待てッ!! 一体なんだよッ?!!」
「岸田……艦娘たちは、命がけの戦いをしてる。体中がズタボロになりながら、それでもお前のために戦ってるんだ」
「お、おう……」
「姉ちゃ……比叡を頼む。絶対に轟沈させないでくれ」
「お……ぉお?」
「頼むぞ岸田……!!」
「…お、ぉおおおぉ??」
傍から見れば、きっと僕は頭がイカれたキモヲタに見えるだろう。岸田ですら、今の僕の言葉にはドン引きしたかもしれない。
それでも構わなかった。僕は、この戦闘アニメーションの裏で、どれだけ凄惨な戦いが繰り広げられているのか知っている。姉ちゃんたちがどれだけ大変な思いをして戦っているか、身を持って体験している。だから言わずにはいられなかった。僕の大切な人が、この画面の向こうで命がけの激しい戦いをしている。それを指揮している岸田に、僕は姉ちゃんの無事を託すしか出来ない。でも岸田なら信用出来る。だから僕は、岸田に大切な姉の無事を託した。岸田に、姉ちゃんを任せた。
「わ、わ
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