11.姉ちゃんが消えてから
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ちにどこかでレベルアップしてきたらしく、改ニになってたんだ」
以前に岸田から聞いたことがある。一部の艦娘はレベルを上げることで、改造でさらに強くなることができるそうだ。そっか……たった一人でレ級と戦ったんだもんね……あんなに辛い思いをして倒したんだもんね。
「で、見せたいのはこれだけ?」
僕は喉の奥が痛くなってくるのを必死に抑え、ワザと岸田に冷たくあたった。
「いや違う。ちょっと待っててくれな」
岸田はさらにタッチパッドでパソコンを操作し、『模様替え』のメニューを開いた。そこで母港画面の家具や内装の変更が出来るらしい。その中で『家具』の項目を選択し、『大切なバット』と表記されたものを選択した。
「ふーん……模様替えでバットなんてあるんだね」
「いや、攻略ウィキでも確認したが、そんなものはない。ついでに言うと、秘書艦を比叡たんにしておかないと、このバットは模様替えのメニューに表示されない」
へ?
操作を終え、岸田が画面を見せてくれた。秘書艦の比叡の死角になっていて分かりづらいが、確かにバットが壁に立てかけてある。このバットは見覚えがある。この、至る所がベコベコにへこんでいるところも、なにより『ひえい』と書かれたところも、僕は見覚えがある……
「これは……」
「理由はわからん。一種の怪奇現象だ。だけど、お前には見せなきゃいけない気がした」
岸田が大真面目な顔をしてそう答えた。タッチパッドを操作し、マウスカーソルをそのバットのところに持ってくると、カーソルの形が代わり、クリック出来るということが分かった。
「岸田はクリックしてみた?」
「してみた。お前は聞くべきだ」
そういって岸田は僕にノートパソコンを手渡す。僕はそれを受け取り、震える右手でクリックしてみた。
『ダメです! これは大切な人にもらったバットなんです! いくら司令でも触っちゃダメです!!』
あ……
「あと比叡たんもクリックしてみろ」
岸田にそう促され、比叡をクリックしてみた。喉の痛みが止まらない。あまりに痛くて、少しずつ涙が溜まってくる。
『司令! 私に弟が出来ました! 司令にも紹介したかったなぁ〜……』
『金剛お姉様の紅茶も美味しいですけど、私の弟のココアも美味しいですよ!』
姉ちゃんだ……やっぱりこれは、比叡姉ちゃんだ。気がついた時、僕は画面に映る比叡姉ちゃんのグラフィックに触れていた。
「姉ちゃん……姉ちゃん……」
この入院中、なんとか押さえつけていた感情が、この瞬間、胸に溢れた。あの日、泣きながら消えていった姉ちゃんは、やはり岸田の鎮守府の艦娘だったんだ。そして、ちゃんと無事帰れたんだ……
比叡姉ちゃんのほっぺたに触れたかった。でも触れる
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