アインクラッド編
龍皇の遺産
戦慄の記憶 02
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果、彼らの命を奪うことになったとしても僕は躊躇わない。 だけどさ、そうなったら約束を破ることになる。 もしかしたら、また攻略組から追放されるかもしれない。 それでも僕は……」
「そうならないといいですね」
「うん。 そうだね」
そして無言。
あれだけの戦いを経て、彼らはそれでも殺人者であろうとする。 自身の快楽のため、人を殺そうとする。
それを責めるつもりはない。
僕も彼らと同じ殺人者だから。 そして今も、僕は僕のために雪丸でモンスターを殺し続けている。
あの頃の僕はモンスターだけじゃない。 人すらも殺した。 何人も、何人も……。
復讐。
あの頃の僕にそれ以外の動機はなかった。 リーナを殺した彼らへの復讐だけを生きがいにしていた。
もし、もしもアマリの身に何かあれば……アマリだけじゃない。 アルゴさんやリズさん、他にもたくさんいる僕の友人たちを彼らが殺そうと言うのなら、僕はまた復讐を選ぶだろう。
でも、もうあんなことは嫌だ。 だから、彼らには大人しくしていてほしい。
それが僕の本音だった。
「ねえ、アマリ」
「ですです?」
「リーナはさ、今の僕を見たらなんて言うかな?」
復讐に囚われ、生き返らせるために全てを拒絶し、けれど復讐は遂げられず、生き返らせることもできなかった。 だと言うのに、今は多くの人に囲まれて笑い合えている僕を見て、果たしてリーナはなんて言うのだろう?
粗雑で粗暴なようでいて実のところ誰よりも優しかったあの片手剣士は、果たして何を思って自身の命を散らしたのだろう?
何よりも解放を願い、どれだけ絶望的な状況だろうと弱音を吐かず、それでも死の恐怖に怯えていた彼女。 リーナの涙を、僕は一度だけ見たことがある。
本当は怖いのだと、僕に縋って泣いたあの夜のリーナを、僕は今でも夢で見る。 夢に見て、そして何度だってそんなリーナを抱き締めるのだ。
アマリに対して抱く想いとは別の想い。
それは恋じゃない。 愛でもない。 かと言って友情でもなければ、もちろん家族に向ける情とも違う。
僕は未だに、リーナに向けていた自分の想いの意味を測れないでいる。
死者の声が生者に届くことはない。
どれだけ望もうと、その言葉は聞こえない。
リーナは死んだ。 死者の思いは誰にも語ることはできないし、そして語るべきではない。
それでも僕は願ってしまう。
リーナの声が聞きたい。 リーナの思いが知りたい。
それが怨嗟の声だろうと、失望だろうと、僕は祈ってしまうのだ。
「『相変わらず女々しい奴め』」
聞き覚えのある口調でアマリが言う。
「リーナ様ならそう言うですよ、きっと。 そう言って欲しいだけかもですけど」
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