3部分:第三章
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第三章
「それではじゃ。よいな」
「はい、それでは」
こうして二人はアマゾンに行くことになった。数日後二人は。アマゾン河をボートで進んでいた。
褐色の肌のガイドも一人いる。博士は彼に対して声をかけた。彼がボートの舵を取っていた。
「のう」
「はい、何ですか?」
「あんたは元々ここにおるのじゃな」
「そうですよ」
ガイドは笑ってこう答えてきた。
「生まれはここなんですよ」
「あれっ、それにしては」
パンチャが彼の顔を見て言うのだった。
「何か感じが」
「日本人みたいだっていうんですか?」
「はい、そんな感じですね」
ここにいるということはインディオだということが窺える。しかし彼の顔立ちはどちらかというと二人がいるリオデジャネイロにも多くいる日系人の顔立ちだったのだ。目尻の皺がまさにそれであった。
「親父さんかお袋さんがそうなんですか?」
「親父がなんですよ」
笑ってこう言ったガイドさんだった。
「親父がね。それで私の名前は」
「名前は?」
「ドウモトといいます」
それが彼の名前だというのである。
「こう呼んで下さい」
「ドウモトさんですか」
「ええ。皆からもそう呼ばれています」
「それじゃあドウモト君」
博士が穏やかな笑顔でそのドウモトに声をかけたのだった。
「わし等の探しているものじゃが」
「わかってますよ。あれですよね」
「そう。あれじゃ」
笑って言う博士だった。まるで少年のそれの様にドウモトに話す。
「アナコンダを見つけるのじゃよ」
「それだったらあれですね」
ドウモトはここでまた言った。
この小さいボートじゃ危ないですね」
「ああ、それじゃ」
博士はドウモトの言葉に応えてまた言ってきた。
「大きな。クルーザーが欲しいのじゃが」
「はい、ありますよ」
それはあると返すドウモトだった。
「ちゃんと。ですから安心して下さい」
「よし、何しろアマゾンじゃ」
博士の顔がここで真剣なものになった。それまでの少年の顔が危機に立ち向かう老騎士の顔になったのである。そうして言うのだった。
「用心に用心はせんとのう」
「馬で風車には向かわないんですね」
「それも一興じゃがな」
パンチャの軽い冗談にも応える。彼が何を言いたいのかはもうわかっていての返しである。博士の名前からの冗談である。
「しかしじゃ。ここでそれをやって馬ではなく子の小さなボートに何かあれば」
「ですよね。この下ってあれですからね」
パンチャはボートの縁から河を覗き込む。黒とも濃緑とも何とも言えない色である。
「一枚下はまさに」
「地獄ですよ」
ドウモトも笑って彼に答えた。
「ピラニアもいますし鰐もいますし」
「ですからね。とても」
「間違っても泳いだりしな
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