第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十七 〜決死の攻城戦〜
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命は大きく溜息をつく。
何となく、恨みがましい眼で紫苑らを見ているような気もするが……。
「どれ。私も試してみるとしよう」
どうやら、私も大丈夫のようだな。
「よし。では鈴々と明命、それから私。兵も百名ほど選抜せよ」
「ご主人様?」
「お待ち下され、殿。鈴々と明命だけで十分ではありませんか」
愛紗と彩が諫める。
「いや、鈴々や明命、兵にばかり危険を押しつけるつもりはない。可能な事がわかった以上、私は参るぞ」
「良いではないか、二人とも」
「星! しかしだな」
「こうなれば、我が主は止めても無駄。そのぐらいの事、わかるであろう、愛紗?」
「む、むう……」
「私だって行けるものならば行きたい。だが、これではな」
星は苦笑する。
「大丈夫なのだ、お兄ちゃんは鈴々が守るのだ。なあ、明命?」
「勿論です」
「では璃々ちゃん、紫苑さん。具体的な場所と、突入後の事を決めたいので見取り図で説明して貰えますかー?」
「うん!」
「わかったわ」
少人数での斬り込みか……ふっ、何やら懐かしいな。
危険よりも、血が騒いでならぬ。
更に一刻後。
お誂え向きに、月が雲に隠れていた。
城外の一角にある石を動かすと、確かに奥へとつながる通路が現れた。
ずっと這っていかねばならぬが、やむを得まい。
「では歳三さま、私が先頭で」
「いや、鈴々が先に参れ。その後に私が続く」
「何故ですか? 失礼ですが、こうした任務は私の方が慣れています」
「それは否定せぬ。が、這っていく事、そしてお前の衣装を考えよ」
「……あ。はぅぁっ!」
気付いたのか、短く叫ぶ明命。
それでも声を抑えたのは流石だが。
……暗くてわからぬが、恐らく顔を真っ赤にしている事であろう。
「にゃ? どうかしたのか?」
「い、いえ! わ、わかりました。では私は殿を務めます」
「では鈴々。頼むぞ」
「応なのだ」
そして、鈴々は通路へと飛び込んだ。
得物はいつもの蛇矛ではなく、あの鍛冶屋に作らせた脇差しを背負っている。
城内に突入したら、敵から槍などを奪えば良い。
さて、私も続かねばならんな。
鈴々が松明を手に、進み始めた。
「お兄ちゃん、大丈夫か?」
「ああ。だが、狭いな」
抜け穴というのは、もう少し広く作るものだが……何を意図して作られたのであろうか。
「思いの外声が響くようだ。何事もなければ、以後城内に出るまで声を立てるな」
返事はないが、それで良い。
皆の息づかいだけが聞こえる中、黙々と先へと進む。
途中、微かに灯りの漏れている箇所があった。
出口にしては狭すぎる故、恐らくは空気穴であろう。
……と、不意に鈴々が止まった。
「お兄ちゃん、着いたみたいなのだ」
「
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