原作開始前
EP.4 模擬戦 VS 妖精の尻尾
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は残った魔力を右手に集中させる。
最後の一撃を迎え撃つため、立っているのがやっとのラクサスも右手に魔力を集めて電撃を纏わせる。
留めきれなかった余剰魔力がワタルの右手から火花か静電気のような現象となって漏れ出す。
ワタルを一撃で葬るのに十分な威力を秘めたラクサスの電撃も空気を震わせている。
20に満たない年齢の魔導士のものとは思えないほど強力な魔力がこの場を包み、野次を飛ばしていた観衆たちは静まりかえって年若い魔導士を見守り、そして口に出さずとも誰もが確信していた。
この2人は将来、ギルドを背負って立つ存在になるだろう、と。
そして魔力と闘気が充満した空間の中、ワタルは姿勢を低く、地面を抉る勢いで駆け出した。全身を発条の様にしならせて踏み込み、掌底を撃ち込む。
迎え撃つラクサスはそれに合わせて電撃を纏った拳を振りかぶり、叩きつける。
「ああああああああああああああああああああっ!!」
「ぜやああああああああああああああああああっ!!」
ワタルの掌底とラクサスの拳がぶつかり合い、2人の呼気と共に魔力が空間を揺さぶる。
空気中のエーテルナノが激しく振動して、魔導士達の感覚にビリビリと突き刺さる。
電撃と魔力が干渉し合って放電のような現象が起き、激突の衝撃で砂塵が舞う。
「(これで!)」
「(仕留める!)」
もはや2人にはこれが模擬戦だという考えは無く、ただ相手を打ち倒すのだという気概、最後に立っているのは自分だという意地のぶつかり合いだった。
2人にはこのせめぎ合いが永遠にも等しい時間感じられたが、実際は1秒にも満たず、当然終わりは来る。
ワタルは突進の勢いのままラクサスの横を滑るように通り抜け、制動。息を大きく吐いて残身をとった。
「うぐっ!?」
瞬間、ズキリと右手首が軋み、だが左手で押さえる事も出来ず、膝をつきそうになる。パワーファイターのラクサスと正面からぶつかった際に痛めでもしたのか、今すぐ転げまわりたいほどの痛みに膝をついて転げまわりたくなるが、ぐっと我慢。
そのまま焼けた鉄棒でも押し付けられたかのような痛みに耐えていると、背後で重いものが落ちたかのような音をワタルは聞いた。
振り返ると、ラクサスがうつぶせに倒れていた。影になってよく見えないが、血が滲んでいる口元には笑みが浮かんでいる。
「……勝者、ワタル!」
ラクサスが倒れ、ワタルが立っている。
どちらが勝者なのかなど、誰が見ても明らかだった。
マカロフのコールに、これが模擬戦なのだと思い出したワタルは決着に沸き立つ周囲に構わず気が抜けて座り込んでしまう。
ラクサスもうつ伏せから仰向けになり、苦しげに呼吸している。
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