原作開始前
EP.4 模擬戦 VS 妖精の尻尾
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「勝者、ワタル!」
苦しそうな呼吸のグレイが降参し、マカロフが声を張り上げると、観客は騒ぎ出す。
期待のルーキーであったグレイが敗れた事に驚きを表す者、勝者ワタルに拍手で賞賛を送る者、賭けに勝ったことを喜んだり、逆に負けて落ち込む者――観客の反応は様々だった。
エルザも観客から飛び出し、ワタルに向かって走る。
「流石だな。でも手抜きはないだろう、手抜きは」
「様子見と言え。――ホラよ、立てるか?」
ワタルはエルザの言葉を受け流しながら、グレイの前まで歩いて手を差し出した。
「あ、ああ、サンキュ」
グレイはその手を取り、ふらつきながらも立ち上がった。
「おいおい、大丈夫かよ……」
「やった本人がそれを言うか……?」
「それもそうか」
ワタルが笑って言うと、グレイも少し笑って、好戦的に言った。
「ふー、お前強いな……でも覚えとけ、次は勝つ!」
「ああ、楽しみにしてる――とっ!?」
「なっ!?」
ワタルはグレイと右手で握手したままで、感じた魔力と悪寒に左手を横にかざして“魂威”を撃ち……飛んできた雷撃を逸らした。
感知できなかった二人は驚きの声を上げながら、ワタルと共に雷撃が飛んできた方向を睨む。
威力的には大した事の無い電撃だったが、不意打ちされた事そのものが癇に障ったのだ。
「へえ、今のを防ぐか。本気じゃなかったっていうのは本当みたいだな」
「……まだグレイがここにいるのに攻撃を仕掛けたのは、不意打ちじゃないと攻撃を当てられないからか、先輩?」
「ほお……言うじゃねえか、新人が」
観客から出てきたのは、ヘッドホンをした、金髪で右目に傷を持つ15,6歳と思われる少年だった。
ワタルの挑発に対し笑ってはいるがとても友好的な笑みではない。だがそんな事はワタルにとって些事だった。
他者を威圧し、誰よりも強くありたいと獣のように爛々とした目はワタルの背筋を緊張させると同時に、気付けば自然と口の端が上がり笑みが浮かんでいたのだ。
この男は強い、と。
「ラクサス! 危ねえじゃねえか!」
「ラクサス……」
グレイの怒鳴り声で、ワタルは少年の名を知り、そしてその少年、ラクサスが見下すように言い返す。
「避けられない方が悪いんだよ。……そうだ、ラクサス・ドレアー。それが俺の名だ、新人」
「知ってると思うけど一応……ワタル・ヤツボシ。で、その新人に何の用?」
「言わなくても分かると思うがな」
「連戦なんだが……」
「よく言う。口元が歪んでるぜ」
ラクサスの指摘通り、ワタルは無意識に好戦的な笑みを顔に貼り付けていた。
旅の中ではこんなに多くの魔導士に会う事などなく、しかも歳の近い魔導士で自分とそう変わ
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