原作開始前
EP.4 模擬戦 VS 妖精の尻尾
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気じゃなかったのか!?」
当然グレイは、手を抜いて戦っていたというワタルに対して怒りの声を挙げた。
それに対して、ワタルは拳をバキバキと鳴らしながら答える。
「本気じゃない、というよりはグレイの力を図っていた、というのが正確だな」
「俺の力?」
未知の相手と戦う時、重要なのはより早く相手の情報を得る事だとワタルは考えている。
それは相手の魔力の大きさや魔法の特徴、弱点だけではない。魔力のパターン、呼吸のリズム、視線はどこに向いているか、足の運び方に拳の握り方――そんな僅かな癖を見切る事で、相手の一歩先を行けるのだ、と。
「まあ、準備運動はこんなものでいいだろ。体も温まって来たし……ここからは本気、だ!」
「なに……ッ!?」
瞬間、その場の空気がガラリと変わった。
どこか遊びがあった視線は貪欲な猛禽が獲物に襲い掛かるようなものに、発する魔力は鋭く尖ったものをグレイと観衆に感じさせた。
ギルダーツやマカロフのように山を思わせる圧力を感じている訳ではない。寧ろ、大きさは彼らに比べれば雲泥の差だ。
だが、身体の芯に、心に、そして魂に刻み込む黒い刃を幻視したグレイは背筋を凍りつかせた。
「(氷の魔導士が背筋を凍らせる? 何の冗談だそれは……!)」
雰囲気に?まれかけたグレイが少し息を吐き出したその刹那、ワタルは既にグレイの懐にいた。
最初にやった時より多くの魔力を足に込め、その魔力を爆発させたかのように放出し、呼吸のリズムの虚をつくタイミングでグレイに迫ったのだ。
ワタルに対し怒っていたグレイだったが、その速さに驚いても冷静さを失わなかった。
ワタルの手に魔力が溜まっているのを感じ取ったグレイは直感的に次の攻撃を喰らったらアウトだと判断し、咄嗟に後ろに跳んびつつ拳を掌に叩きつけた。
「“槍騎兵”!」
十分な魔力を練り込む暇が無かったためか、生成されたのはたった一本の氷の槍。
だが、その造形速度は今までで一番早いものだった。
至近距離のワタルに外す事はあり得ないと、グレイは確信してそれを放った。
自分のトップスピードに反応して後ろに跳び、カウンターの造形魔法すら放って見せたグレイに、ワタルは目を見開いた。
「(此処だ!)」
それは驚愕でもあるが、半分以上は自分への気合だった。グレイが自分に反応して見せたなら、自分はさらに先へ行くのだと奮い立たせるものだ。
短く息を吐いて一歩踏み込み、極限に高まった集中力が一瞬を何倍にも引き伸ばす。
「(ここを踏み越えれば……!)」
魔力感知能力が高いワタルは魔法が発動する直前に、魔導士の体内の魔力が高まるのを感知してその軌跡をある程度予測す
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