アインクラッド編
龍皇の遺産
戦慄の記憶 01
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それを無言で放ってきた。
「これは?」
「スピード系の素材をドロップするMobとクエストの情報ダ。 今日は気分がいいからやるヨ」
素っ気ない風を装っているのは照れ隠しをしているからだろう。 僕としては口止め料を払った正式な依頼だけど、アルゴさんにとってはそうじゃなかったらしい。 普段はふてぶてしいのに変なところで義理堅いのは相変わらずだ。
ここで下手に遠慮しようものなら、多額のコルを請求されるのがオチなので、僕はアルゴさんの気分が変わらない内に羊皮紙をストレージに収めた。
「ありがとね。 ドラゴニュート鉱石は雪丸の強化に向かないから困ってたんだけど、これでなんとかなりそうだよ」
「どうせ気まぐれだしナ。 それに、お得意様にはサービスしないとだロ?」
「じゃあ、そのサービス精神をもう少し発揮してもらえるかな? ちょっとクエストを探しててね。 大型モンスターを討伐する系のクエスト。 心当たりはない?」
「その情報は有料だナ。 3千コル……と言いたいところだけド、さっき渡した中に目ぼしいのがあるゾ」
「そう。 なら、明日にでも言ってみようかな」
僕がそう言ったタイミングで、丁度メッセージが届いた。 目線でアルゴさんに断わりを入れてから確認すると、差出人はアマリだった。
どうやら強化はつつがなく終わったらしい。
「マーちゃんカ?」
「うん。 強化が終わったみたいだね。 でぃーちゃんの調子を見たいから来て欲しいって」
「まさかいきなり最前線にいかないだろうナ?」
「大丈夫だよ。 さすがにアマリも僕もその辺りは心得てるから」
慣れていない武器で最前線にいくほど、僕たちは馬鹿じゃないし無謀でもない。 それはアルゴさんも分かっているだろうけど、それでも心配して確認する辺りがアルゴさんの優しいところだ。
「まあ、そう言うわけだから」
「ン、あア、さっさといってやレ。 マーちゃんを待たせると後が怖いゾ」
「そうだね。 じゃあ、また色々とお世話になるだろうけど、またね」
そう言って手を振ってから踵を返すと、そのまま転移門のある広場に向けて歩き出した。
「なア、フー坊」
と、アルゴさんの声が追いかけてくる。
首だけで振り返るとアルゴさんは動くことなく僕をまっすぐに見ていた。
困っているような、迷っているような、泣き出してしまいそうな、そんな複雑な表情。 それだけでなんとなく言いたいことは伝わったけど、アルゴさんはその情報を口にする。
「奴らが動いていル」
詳細なんてない。 どう動いているのか、何をしているのかも言わない。
その情報は僕にとって最も聞きたくなかった情報だ。 それが分かっているからアルゴさんの表情は複雑なのだろう。
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