二十四話:存在否定
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だが、そんなことは起こらない。他ならぬ自分がその権利を奪ったのだから。
永遠に責められることすらない、心を焼き尽くす罪悪感。
それが衛宮切嗣の―――罪だった。
「……やない。間違いなんかやない! おとんは絶対に間違ってなんてないッ!」
その時、絶望に打ちひしがれる男の耳に大きな、それでいて優しい声が響いてきた。
何も映っていない瞳を上げたその先にはリインフォースとユニゾンした影響か、しっかりとその足で立っているはやての姿があった。
「違う! 誰一人として救えない僕が居なければ! 誰もが救われる未来があったッ!!」
「私はおとんがどんな人生を送ってきたかはよう分からん。でも、おとんが救った人を一人知っとるよ」
子供のように癇癪を起して怒鳴り声を上げる切嗣。
それに対し、はやてはまるで母親のような慈愛に満ちた微笑みを向ける。
彼には何故この子がこんな自分に微笑みかけてくれるのか理解できなかった。
こんなにも罪深い自分に笑いかける価値などないのに。
「両親が死んで悲しみの底にいた少女にその人は笑いかけてくれた」
死というものを理解できなかった。
でも、大好きな人に会えないという悲しさだけは分かった。
「その人は魔法使いで、私に飛びっきりの魔法を見せてくれた」
そんな時に男は現れた。どこか頼りなさげな顔で。
それでも精一杯の優しい笑顔を向けてくれて。
「毎日を誰かと笑ったり、怒ったり、悲しんだりして過ごせる魔法を」
初めはどちらもよそよそしかった。
でも、それもすぐになくなり毎日を笑って過ごした。
「悲しみの底にいる少女を救う魔法……大切な家族になってくれた」
失ったものは帰ってこない。でも、それ以上のものを彼は与えてくれた。
今なら分かる。嘘偽りのない愛で少女を救ってみせた。
「おとんは―――私を救ってくれたんよ」
満面の笑みを向けられて切嗣は目を見開く。
銀色になった髪に、黒色の翼は客観的に見れば悪魔にすら見えるだろう。
だが、しかし。切嗣にとって、はやては―――光の天使だった。
「おとんが生まれてきたから私が救われた」
「でも、僕は君を殺そうとした……」
「それでも、私が救われた事実は消えんよ。それにどうせ、お父さんとお母さんのことも嘘なんやろ?」
まるで、母親のように優しく切嗣を抱きしめるはやて。
切嗣は振り払うこともできずに力なく頷くことしかできない。
この身にそのような権利がないことを理解してなお振り払えない。
「僕は大勢の人を無意味な死に追いやった…ッ」
「救われた私が言っていいか分からんけど、失敗できんのならそれも間違いやない」
「でも、奇跡は起
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