二十四話:存在否定
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宮切嗣のエゴを満たすだけの糧となった。
そして、そのエゴもまた無意味で無価値なものだった。
「愛も……奇跡も存在した。人殺しなどいなくても世界は救えた……」
自分という偽物の正義の味方など必要なく、世界は救えた。
否、この手に宿る奇跡は本物の正義の味方として世界を救えたはずなのだ。
それを拒んだのは自分。勝手に一人で世界に絶望して希望を見出すことをしなかった自分。
衛宮切嗣というどこまでも罪深い咎人の偽善を守るため。
「どこだ…どこで全てを間違えた…? 僕は奇跡を起こせたのに、どうして間違った?」
誰もが茫然と自身を見つめる中、切嗣は一人うわごとのように問い続けていく。
全ての始まりは間違った理想を抱いた時から始まった。
それを叶えようと愚かにも行動を起こした道化の罪。
奇跡を起こせたのに諦めて、無意味な行動を続けてきたのは他ならぬ自分。
「く…はは…あはははっ! そうか……誰もが平和な世界という理想を抱いたことそのものが間違いだった!!」
狂ったように笑いながら彼は涙を流し続ける。
本当に狂えればどれだけ楽だろうか。しかし、自分だけ楽になることなど許されない。
それは無意味な犠牲にしてしまった、殺してきた者達への懺悔のために。
こんな誤った願いを抱いたのはそもそもが―――
「そうだ! 衛宮切嗣という男が生まれたこと自体が―――間違いだったッ!!」
誰一人として救えはしない、愚かな男が生まれてしまったから悲劇が生まれた。
正義の味方などを目指したから無意味な犠牲が生まれた。
数え切れない絶望を生み出してきた。望むことすらなく。
当たり前に、まるで呼吸をするかのように。……絶望を与えてきた。
「僕が生まれなければ誰も死なずにすんだ…っ。悲劇が起こることなどなかった。絶望など生まれはしなかった…ッ!」
全ては自分という存在が生み出した自己満足の結果。
何がこの世全ての悪を担うだ。何を思い違いしていたのだ。
衛宮切嗣という男こそがこの世全ての悪だった。
邪悪の根源だった。誰かを救うと言って誰かを殺すことしかできない。
そんな不出来を通り越して害悪な存在。そんなどこまでも滑稽な男。
「誰かを救いたいという願いなんて……間違っていたんだ…ッ」
―――ごめんなさい……ごめんなさい……生まれてきて…ごめんなさい。
涙を流す権利も、謝る権利も、欠片もないと理解している。
しかし、それでも男には謝り続けることしかできなかった。
自分が生まれたせいで無意味に生を奪われた者達へと詫び続ける。
いっそ、糾弾された方がマシだった。殺してきた者達に串刺しにされたかった。
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