9.姉ちゃんと共に来たもの
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、僕は比叡さんの艤装をしっかり見たことがなかった。こうやって改めて見ると、確かに艤装は戦闘用の機械だと言うのが分かる。例え所々ヒビが入り、折れ曲がって使いものにならない砲塔があるとしても、これがとんでもない力を秘めた兵器であることが、空気を通して伝わってくる。
Xアームの先端に取り付けられた4つの砲が、機械音を立てて動き、アームそれぞれが独立して稼働する。折れ曲がった砲塔はあるがアームは4本とも無事なようで、多少ぎこちない動きは見せるが、稼働そのものには問題ないようだった。初めて見る艦娘としての比叡さんの姿が、僕には少し怖かった。
「燃料は約半分……弾薬も充分とはいえないけど……これならまだ行ける」
そう呟く比叡さんの顔は、テレタビーズの試合ですら見せたことがないほどの険しい、怖い表情だ。
「姉ちゃん……」
僕の身体が自然に震えた。さっきの比叡さんとレ級の一瞬の攻防を見ただけで、ヤツの恐ろしさがよく分かる。あんな恐ろしいヤツと戦うなんておかしい。
「シュウくん。お姉ちゃん、行ってくるから。もし何かあったら……」
「もし何かあったらって……なに……」
「お父様とお母様に、“ありがとうございました”って言っておいて」
比叡さんはそう言い、玄関のドアを開けガッシャガッシャと音を立てながらウチから出て行った。
本当はここで、父さんや母さんを起こし、警察に110番をするべきだったのだろう。冷静に考えれば、その対応が一番正しい。
ただその時、僕は気が動転していた。再度居間に戻り、ベランダに出た。ベランダには、先ほどレ級がこちらに撃ちだし、比叡さんが食い止めた砲弾が、湯気を立てながら転がっている。
おっかなびっくり手にとってみた。先ほどのように持てないほどではないが、砲弾は未だに熱を帯びていて、手に取ると火傷しそうなほど熱い。そして、気を抜くと片手では持てないほど重い。以前に陸上部の仲間に持たせてもらった砲丸投げの砲丸と似たような大きさだが、体感では恐らくその何倍もの重さだ。
こんなものを、衝撃波が発生するほどのスピードで撃ちだすレ級。そしてそんなものを、もしまともに食らったら……何度か手を繋いだことはあるが、比叡さんの手は普通の女の人と変わらず、あったかくて柔らかい。さっきは砲弾を受け止めていたけど、きっと本質は普通の人と変わらないはずだ。
僕の頭の中に、血みどろになって倒れる比叡さんと、その傍らでニヤニヤと笑うレ級のイメージが浮かんだ。
「ヤバい……ヤバい……姉ちゃん……」
恐怖で身体がさらに震えてきた。足から力が抜け、立ってられなくなり、僕は膝から崩れ落ちた。ベランダを風が駆け抜け、その冷たさが僕の体温を奪い、信じられないほど寒くなってきた。血の気が顔から引い
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