4部分:第四章
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第四章
「こうしたことも普通です」
「話には聞いていたけれど」
「ですが安心して下さい」
しかし目の前に何も見えない状況でもだ。ロナウドは落ち着いていた。そしてその落ち着きの中でエドワードに対して言ってきたのであった。
「それは」
「安心していい?」
「はい、そうです」
その時だった。犬達の鳴き声が前から聞こえてきた。
それを聞きながらだ。ロナウドはまた彼に言ってきた。
「あそこです」
「あそこ?」
「はい、あそこです」
こう言うのだった。
「あそこに向かいましょう」
「犬達が見つけたのかい」
「犬は目で感じませんから」
それではというのだ。では何から感じるかだった。
「耳と。特に鼻で、です」
「そうだったな。犬は」
「だからここは犬達に従いましょう」
そうするというのだ。
「そこに絶対に何かあります」
「よし、それじゃあ」
「行きましょう」
こうしてであった。彼等はそのまま犬達の鳴き声がする方に向かって行く。そうしてそこにあったものは。
洞窟だった。それが岩山の中にあった。二人は急いでそこに入りだ。難を逃れたのだった。
当然犬達も一緒だ。洞窟の中に入って落ち着いてから犬達の数を数える。すると全部揃っていた。
「一匹も欠けていないな」
「ええ、皆いますね」
「そうだな。まずは何よりだ」
洞窟の中に背をもたれかけさせて座る二人の周りに多くの犬達が丸くなって寝ている。その犬たちを見ながらの話だった。
「それにしても。あのままだと」
「間違いなく死んでいましたね」
「ああ、間違いない」
まさにそうなったというのだった。
「吹雪の中でな」
「あれはウェンティゴです」
「ウェンティゴ!?」
「この辺りのインディアン達の間で言い伝えられている化け物です」
それだというのである。
「吹雪の中で出て来る奴で。人を凍らせて食ってしまうのです」
「それがあの吹雪か」
「この辺りじゃそう呼ばれています」
まさにそうだというのだ。
「ですから」
「そうだったのか。しかし」
「とりあえずはここで難を逃れましょう」
そうするというのである。
「吹雪が終わるまで」
「そうだな。それにしても」
ここでまた言うエドワードだった。
「温かいな」
「温かいですか」
「うん、犬達が周りにいるから」
だからだというのだ。
「温かいな」
「ええ、こうしたこともあるので」
また言うロナウドだった。
「それで犬達にしたのです」
「それでだったのか」
「そうです。馬ではこうはいきませんね」
「馬はな」
それは確かに無理だった。それにこうした山道を越えることはやはり無理だった。そうしたことも考えて頭の中に入れながら話すのだった。
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