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珠瀬鎮守府
響ノ章
睡眠不足
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を済ます姫の手伝いのみだった私達の仕事は姫の監視という多大な時間を新たに割くことになった。この多忙な時期に、これはある意味致命的だ。伊勢も含め、私達は限界に近い。それは隊長も例外ではないだろう。
「分かった、姫。信じよう」
「な、正気ですか響殿」
 もう一度私の名前を呼ばれて、先感じた違和感を思い出した。ああ、そういうことか。
「三日月の事件の時、姫は提督と三日月の事、よく見てくれていたしね。的確な判断だった。私が居ない時にも何をするってこともなく隠れていてくれたし……それに、隊長だって姫の事、そう呼んでるでしょ?」
 殿と敬称をつけているのだ。隊長も、姫の事をどのような形でかは分からないが、認めている。いつか彼自身が言っていた言葉を思い出す。彼が言った「貴方達」の中に、今は姫も入っているのだろうか。
「これは、その」
「提督が退院した時、多忙のあまり全員倒れてました、なんて洒落にもならないよ。私は姫を信じる。姫には我慢してもらおう」
「ほう? 私が、我慢と?」
「暇でしょ? 提督もいないし、警備という名の話し相手も居ないわけだし」
「話し相手か、その割にはぴりぴりしていたが……まぁそうでもないぞ。提督が持ってきた本も多々ある。あやつの執務室にも、業務とは関係のない本があるしの。勝手に読ませてもらおう。勿論機密情報の類には手を出さん。出したところでもう意味もないしな」
 私は彼女の言葉に、ある事を見出す。
「提督が本を持ってくるのって、いつから?」
「この鎮守府に来てから直ぐだ。暇だと言ったら渡して貰えた」
「最初はどんなのを?」
「最初は……応急処置関連の本だった気がする」
 成る程、姫が妙に提督や三日月が意識を失った際に的確な指示が出来たのか不思議だったが、そういうことだったのか。
「そういう事だ。暇を持て余す事はない」
 結局その後隊長が折れる形で姫の警備、基監視はその日以降無くなった。私達は提督が倒れる前の忙しさに戻る事となるはずだったのが、鳳翔さんの手配で昼間の伊勢達の業務は減り、私達は十分な睡眠時間を確保する事が出来るようになった。勿論全員が同時というわけではなく、不測の事態に備え夜中一人は起きている事になっていたが。
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