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珠瀬鎮守府
響ノ章
睡眠不足
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通の提督ならばこの自体を起こさない。何かが変わる、そう彼は信じているのだ。そうしてそれを、私は期待しているのだろうか、それとも……。
 私は立ち上がる。これ以上居ても、逆上せるだけだ。脱衣所に向かい着替え外に出た。朝日は上り明るくなっている空を見て、酷く眠気を覚えた私は自身の天幕へと向かい、死んだように眠った。



 翌日、姫の扉の前で二人が話す声を聞いた。
「そんな事を言われましても、之も警備なのです。我慢していただきたい」
「我慢しているのは何方だ。私は良いと言っているだろうに。この階から出なければ良いだけだろう? 何を警備する必要がある。監視とはっきり言えばどうだ」
 要領を得ぬ会話に私は半ば呆れながら扉を開けた。
「響殿」
「響か」
 二者共闖入者である私に視線を注ぐ。対して私は自身の手元に視線を注ぐ。手に持っているのは姫の昼食だ。
「忝ない」
 礼を言う姫に昼食を渡し、二人にどうしたか尋ねる。
「姫殿が我々の警備が要らないと」
 隊長の言葉に少し疑問を抱きつつも姫に言葉をかける。
「何でまた」
「お前たちの言う警備が、お前たち自身に大きな負担となっているのは確かだ。もし本当に警備なら、そんなもの私に要らない」
 先廊下で聞こえた台詞が繋がる。それでも、姫の近くに人員を置き続ける理由、それは、姫を信用していないからに他ならない。警備ではなく監視の為。
「監視の為なら、私は裏切らんぞ」
「分かっているじゃないか、監視と。監視対象が其れを言うのかい」
「私は危害を加えぬ、そう誓ったぞ。あれは、生半可な気持ちでしたものではないのだが」
 曰く、提督と姫は金打を鳴らし合ったという。
「ですが、そう易易と目を離せるものではなりません」
 監視と開き直った隊長が言う。現に続けているのもそのせいだ。例え誓ったといえど、はいそうですかと言えたものではない。
「物悲しいな。隊長よ、以前佩用していたな? 金打の意味知らぬ者ではあるまい」
 隊長が黙る。私にとってそれがどんなに重い事かは分からない。ただ、確かにそれは絶対の誓い、そう思わせる程その無言は重たかった。
「私はそういった思いを乗せてあの場で誓った。あんまり踏み躙られるのは、そろそろ私も限界だぞ」
「ですが提督殿が続けていた手前、我々が止めるわけにはいきません」
「あやつが居た頃は警備なぞされていないぞ? 風呂場くらいだろうお前たちが居たのは。あいつは向かいの部屋に居る、ただそれだけだった。勿論奴とて監視の意味は合っただろう。だが、外ではあくまで見つからないようにする見張り、そう建前は立てておったわ」
 私は思案する。結構な時間を姫の側で過ごし、監視という役割を果たしていた提督は今や病床に伏す。その御蔭で、復興の手伝いと三日月の監視を除けば、夜中に用事
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