2.『紅の少女』
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東が霊夢に拾われて、数時間たった。
朝食を終えたころ、灰色の雲が広がり始め、やがて雨を降らせた。
「最近の天気はころころ変わるわねぇ……もう冬になるというのに」
「ひゃ、さむっ」
「ごめんごめん」
障子を開くと、冷たい空気がどっと押しかけてきた。無数の落ち葉が一掃されて空中で舞い上がり、とてもじゃないが外に出ようとは思えない状況である。
だが来るものは来る。
障子が雑に開かれた。
「霊夢ぅー、きてあげたわよ」
フリル多めの幼き少女、レミリア・スカーレットである。黒曜石のような黒い翼をバサバサとはばたかせている。
にひひと妖しい笑みをみせると、霊夢は惜しむことなく嫌そうな顔をした。
「呼んでないわよ。というか、雨なのになんで外出て平気なのよ。吸血鬼捨てたの?」
「馬鹿を言うな。私は吸血鬼を捨ててないよ。パチェがなんか、雨から身を守る魔法を試させてほしいとかなんとかで」
「……で、実験道具にされたってわけ」
「友人同士だしそのぐらいはね」
見ると、たしかに体のどこにも水滴は見当たらない。
それはそうと、東はじっとレミリアを見つめていた。
「(吸血鬼……?てっきり東洋の妖怪しかいないと思っていたが、そんなのもいるのか。吸血鬼は弱点が多い分、戦闘力が強大と聞く。幻想郷の主力の一つと考えていいだろう)」
「あら……?見かけない人間ね。ついに人攫い業も始めたの?」
「馬鹿言うんじゃないわよ。私は人間を捨ててなんていないわ」
レミリアはふわりと東に近寄る。敵意がないことを見抜くと、東は無知そうな声で「だれ?」と尋ねた。
東の能力は、二つある。
一つが、あらゆるものを見抜く程度の能力。
そしてもう一つが、あらゆるものに見抜かれない程度の能力。
いつの間にか手にしていたその能力ゆえ、小さい子供のフリなんてお茶の子さいさいである。
「あら、可愛らしい。私は、レミリア・スカーレットよ」
「血吸わないでよ、まだ幼いんだから」
「私だってそこまで非道じゃないのよ。……?」
じっと見つめられ、東は若干動揺した。
戦闘力が強大なら、能力も強大である可能性がある。もし彼女が自分を見抜いてしまったら、一体どうなるのだろうと頭をフル回転させた。
しかし違った。
「この子……この子の運命が、見えないわ」
「え?」
「何か、とてつもなく大きな力で遮られて……。ねぇ霊夢、この子は何者?」
「……外来人、よ」
レミリアが信じられないとばかりに東の頬を撫でる。その手がくすぐったくて、一瞬ドキッとした。
……中身は年頃の少年である。
「暖かいわね、子供の体温って」
よいしょと自分と同じくらいの身長の少女に軽々と持ち上げられ、さらに細く小さな脚の上に乗せられた。
「いいわね、この子。抱き心地
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