3部分:第三章
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だ、御前よく無事だったな」
無論今彼等がいる場所も見渡す限り銀世界である。他には何も見えはしない。周りにある筈のゲオですら雪の中に消えて見てしまっていた。
「あの吹雪の中で」
「助けてもらった」
彼はこう父に答えた。
「それでここまで戻ってこれた」
「助けてもらった!?」
父は今の彼の言葉を聞いて目をしばたかせた。まだ距離はあったがそれでもジャムカの目にはそれがよく見えたのである。
「一体誰にだ?」
「狼にだ」
こう父に答えながら自分のゲオに向かって馬を進める。そうしながら遂にそのゲオの前まで辿り着いたのだった。その彼を父が迎えた。
「助けられてここまで来られた」
「狼にか」
「そうだ。あいつ等は」
「あそこにいるぞ」
父はこう言ってジャムカの背中の方を指差した。そこにあの狼達がいた。その黒い姿が雪の中にはっきりとあった。
「あれか?」
「ああ、あの狼達だ」
ジャムカもその狼達を見て父に答えた。
「あいつ等に助けられて戻ってこれた」
「どうやって助けてもらったんだ?」
「吹雪の中で眠ってしまったところを周りを覆われてな」
「それでか」
「肉も貰った」
そのことも話すのだった。
「兎のな。それで案内もしてもらってここまで戻って来られた」
「何から何まで助けてもらったわけか」
「そうだ。さもなければとっくの昔に死んでいた」
父に対して話を続ける。
「狼達がいなかったらな」
「そうだな。御前は狼に助けられたんだ」
父は息子の言葉を疑っていなかった。完全に信じていた。
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