第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十六 〜夜戦〜
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り、鍛えられた兵らは一糸の乱れもなく、次々に賊の胸板を貫く。
「話が違うぞ、こんなの聞いてねぇ!」
「だ、駄目だ! 反対へ!……ギャッ!」
方向転換した先頭の者が、ギラリと光る得物で眉間を割られた。
「何処へ行く? 関雲長を見事倒してみせるか?」
そして、止めは愛紗率いる剣兵である。
主に鈴々が調練を行った隊だけに、皆が勇猛果敢と評されている。
その期待に違わず、怯んだ賊を切り伏せていた。
「く、くそったれ! なら、土方の頸を取れ!」
「させるか!」
「そうはいかんぞ! はいはいはいはいっ!」
「はぁぁぁぁぁっ!」
三方から攻め立てられ、完全に賊軍は浮き足立っている。
それでも、半ば自棄になった賊どもの一部は、此所に押し寄せてきた。
「さて鈴々。出番だな」
「応なのだ。お兄ちゃんは、そこで見ているといいのだ」
「ふっ、それは聞けぬな。私は武人だぞ?」
兼定を抜くと、四肢に力が漲る気がする。
いや、実際に何者かが宿っているのやも知れぬ。
「止めても無駄でしょう。自分の身ぐらい守れますから、ご心配なく」
「むー、風は隠れているしかありませんねー」
「案ずるな。鈴々がいる、それでも抜けてきた者は私が相手をしよう」
「合点なのだ。お兄ちゃんの出番は、たぶんないのだ♪」
小柄な身体に似合わぬ蛇矛でも、鈴々は手足の如く扱う。
自暴自棄になり突撃してくる賊も、その一振りで数人が薙ぎ倒されていく。
「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」
「がはっ!」
「げっ!」
「あ、相手はガキ一人だ! まとめてかかれ!」
「へへーん。お前達みたいなのが束になっても、ちーっとも怖くないのだ!」
本人が宣言した通り、誰一人としてその壁を突破できた者は未だ、皆無である。
その頃には、雲に隠れていた月が姿を見せ、周囲の様子が照らし出された。
彩、星、愛紗はじりじりと賊軍を押している。
中には、武器を放り出して降伏する者も出始めたようだ。
「残るは貴様らだけのようだな」
指揮官らしき者以下、百余名だけがまだ、剣を手にしていた。
「おのれ……」
「武器を捨てよ。降伏すれば命までは取らぬ」
「ほざけっ! おい、全員であのガキにかかれ!」
「え、ええっ?」
「無茶言うな! あんな強いガキに」
「つべこべ言うな。何なら、今すぐ死ぬか?」
賊将が、仲間に剣を向けた。
「何て奴なのだ。おいお前、それなら自分でかかって来いなのだ!」
鈴々が叫ぶ。
が、賊将は無言で、手近にいた賊を一人、突き刺した。
「な……」
「これは脅しじゃねぇ。さっさとやれ」
「ち、ちきしょぉぉぉぉっ!」
「うぉぉぉぉっ!」
残った賊どもが、一斉に鈴々に打ちかかる。
「にゃ、にゃっ?」
たじろぐ鈴々を横目に、
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