8.姉ちゃんの正体
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
自分のせいで仲間が大怪我しちゃったり、ちょっとしたミスが大失敗になっちゃって、
それを悔やんで落ち込む子がやっぱりいるの
僕はその一連の光景を見て涙が出てきた。比叡さんは……本人の言うとおりなら、きっと命をかけて戦っていたはずだ。必死に敵の攻撃をかわし、時にはその攻撃を受け、身体に傷を負い、死の恐怖を感じながら、必死に戦っていたはずなんだ。それがこんな……こんな簡単な表示で済まされて……服が破け装備品が破壊され大怪我を負っても、『中破』の文字と、こんなグラフィックだけで済まされて……
羅針盤が回され、緑色のアイコンに簡略化された岸田の艦隊が次のマスに進む。さっきの戦いで傷を負った、比叡さんの妹の榛名は大丈夫だろうか……艦娘のみんなは今、どんな気持ちで進軍しているのだろう……金剛と霧島は榛名の姉妹だ。傷を負い、それでも懸命に戦う榛名の姿を傍らでどんな気持ちで見ているのだろう……大鳳は……加賀は……
比叡さんは、僕が体調を崩しただけで、あんなにも取り乱すほど優しい。もし比叡さんが、今この子たちと同じ艦隊にいて、ダメージを負っている自分の妹を見たら、どんな気持ちになるんだろう……そして比叡さん自身、今までに一体何度こんな大ダメージを追ってきたんだろう……何度その状態で、岸田に進軍させられたんだろう……考えれば考えるほど悲しくなってきた……そして比叡さんの命がけの戦いも、こんな風に表現されていたのかと思うとやるせなくて、辛くて……
「おいシュウ……」
「……ん?」
「ん? じゃねーよ……なんで泣いてるんだよ」
自分では気付かなかったけど、僕は知らないうちに泣いてたようだ。
「なんでもない……大丈夫」
「もうやめるか?」
「大丈夫だから。『比叡』がいなくなったとこまで進めて」
「……分かった。ちょうど次のところが、比叡たんが消えたマスだ。ここにはレ級って敵がいる」
レキュウというのがどんなものなのかは分からないが、ぼくはその名前を比叡さんの口から聞いた覚えがある。
―確かレ級と戦ってて、もみくちゃになって海の中に沈んだとこまでは……
「レキュウってどんなやつ?」
「このゲームの雑魚キャラの中でも最強クラスの雑魚キャラだ。下手なボスより強い。しかもこのマスにいるのは、レ級エリートって言って、普通のレ級よりも強いやつだ」
岸田は僕に簡単かつ明確なレクチャーをしてくれながら、戦いの陣形を選択する。今回選択したのは、攻撃力は高いがその分相手の攻撃を受けやすいらしい単縦陣。
陣形の選択が終わると、戦いがはじまる。また艦娘たちの命がけの戦いが、単なるカードとカードが互いに相手の数字を減らし合うだけのチープなアニメーションで表現され、それを眺める時間が始まる……
「あれ?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ