7.姉ちゃんの謎
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が僕には分からなかった。あまりにもショッキングな体験をしたことは事実だし、それで体調を崩すほどのショックを受けたことも間違いないんだけど……
「今日、色々ショッキングなことがあって……友達の家に行ってね。ゲームをやってきたんだけど……」
「うん」
―姉ちゃんとしか思えないキャラクターがいた。
「……ほら、姉ちゃんが住んでた…なんだっけ……」
「“叢雲たんチュッチュ”鎮守府?」
―友達が、その名前でゲームをやってた。
「……」
「シュウくん?」
たまたまだ。きっとたまたまなんだ。たまたま比叡さんに似たキャラクターが存在するゲームがあって、たまたま比叡さんが住んでたところと同じ名前を岸田が使ってるだけだ。
ならば言うのは簡単なはずだ。それなのに、言う勇気が出ない。なぜか言おうとすると、僕の心が急ブレーキをかけて、僕の覚悟を減速させる。口に出そうとすると、途端に緊張して喉から声が出なくなる。クソッ……
僕はこんなに勇気がなかったのか。今目の前で苦しんでいる、たった一人の大切な姉を助ける勇気すら持てないのか……僕は不甲斐ない自分への腹立たしさと、それでも口に出すことの出来ない悔しさ……そしてなにより比叡さんへの申し訳無さで、少しづつ目に涙が溜まってきた。
「シュウくん……」
しばらく僕の答えを待っていた比叡さんだったが、僕が次第に涙を貯めていくこの状況にいたたまれなくなったのだろうか。一言『ごめんね』と言った後、立ち上がろうとした。いけない。今比叡さんを一人にしてはいけない。直感でそう感じた僕は、立ち上がる比叡さんの右手をとっさに掴み、比叡さんを逃がすまいと必死にくらいついた。
「待って……」
「……シュウくん……でも私……」
「“お姉ちゃん”」
「?」
「姉ちゃんは僕の姉ちゃんなんだから、“私”じゃなくて“お姉ちゃん”」
「……」
座っている僕の位置からは、立ち上がって僕から顔を背けている比叡さんの顔は見えない。でも、比叡さんが今、どんな表情をしているのか分かる。多分、誰にも面と向かっては見せたことのない、あの神社で空を見上げているときの表情だ。あの感情の読めない、だけど綺麗なあの表情だ。綺麗だけど、本当の比叡さんからは程遠いあの表情のはずだ。
「姉ちゃん、座って」
比叡さんは何も言わず、再び僕の左隣に座った。さっきまでと少し違うのは、僕と比叡さんの間に距離がなくなったことと、僕と比叡さんが互いにしっかりと手を繋いでいることぐらいだ。大丈夫。手から伝わる比叡さんの温かさが、僕に少しだけ勇気をくれる。
「今日、姉ちゃんがどこから来たのか……そのヒントを知った」
「そうなの? じゃあ、帰り方も分かるの……?」
「いや、今はまだ分からない。正直に言う
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