7.姉ちゃんの謎
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「いや待て!! 落ち着けシュウ!! 離せッ!! 一体何なんだよッ!!」
岸田が僕の腕を強引に振りほどいた。僕と岸田は勢い余って床に倒れてしまい、岸田は顔面を床で強打、僕は尻をしこたま打った。
「ゼハー……ゼハー……ご、ごめん岸田……」
「いでで……いやいい。いいんだけど……どうしたシュウ……」
いえない。最近居候している比叡さんの正体が分からないだなんて……そんなことこいつに言えるわけがない。
「い、いや……なんでもない……ごめん」
「ったく……なんなんだよッ……」
さっき顔面から倒れたせいか、岸田の鼻からはちょっと血が垂れていた。とても不満そうな顔をしている。イライラが抑えられないという感じだ。
「ごめん岸田……本当にごめん……」
僕はとても申し訳ない気持ちになり、岸田にそう謝った。あの夜以降、僕は『ヒエイ』という言葉に少々敏感になっていた。比叡さんは、確かに悪い人ではない。悪い人ではないのだが、得体の知れない部分が多い。あまりにも矛盾がなさすぎる比叡さんの記憶と戦前から戦時中までの日本の歴史……金剛型戦艦の数と比叡さんの姉妹の人数……そして戦艦・比叡の運命……比叡さんの正体が掴めない。悪い人ではない。悪い人ではないけれど、比叡さんは一体誰なんだろう……
僕の謝罪を受けたあと、岸田はそばにいた女子からティッシュを数枚もらい、それで鼻血を拭きながら、だいぶ困った顔をしていた。僕から目をそらし、鼻をティッシュで抑えながら上を向いていたが、何か考えているような表情を見せたあと、思い立ったように僕の方を振り返った。上を向いたまま、目だけをこっちに向けて。
「シュウ、見に来るか?」
「え? 何を?」
「艦これだよ。すっげぇ気になるんだろ? ヒエイたんはまだ戻ってきてないけど、ゲーム画面なら見せられる。図鑑のメニューでヒエイも見られるぞ」
正直に言うと、僕は少し迷った。この岸田の誘いを飲むと、なんだか絶対に知らなくとも良いこと……知ってはいけないことを知ってしまうような気がしたのだ。
でもそれが、比叡さんの正体を掴むヒントになるのなら見てみたい……見なければならない……そう思った。一種の使命感のようなものを感じた。
「分かった。ありがとう。今日岸田の家で見せてもらっていいかな」
「おう。俺とお前の仲だ。じゃあこれから俺んちに行くぞ」
岸田の家は、比叡さんと出会った神社から見て、ちょうど僕の家の反対側にある。帰りが少々めんどくさそうだが、そんなことも言ってられず、僕と岸田は、岸田の家に向かった。
岸田の部屋は相変わらず萌えキャラのフィギュアがたくさんある。岸田はバッグを床に置き、制服の上着を脱ぐと、すぐさまデスクトップパソコンに電源を入れた。しかし、ここまでた
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